グランマニエな君に酔う
時刻は午前2時をまわっていた。こんな時間に起きているのは任務から帰ってきた奴らか、これから任務にでる奴らしかいない。
当然、談話室にも人が居る時間帯ではない。だが、部屋からは微かに人の気配がしていた。
長期任務後だし、疲れてるからこのまま直ぐにでも自分の部屋へ行きたいところだが、どうも談話室の人の気配が気になる。
気になったままだと寝るに寝れなくなりそうなので、気配の正体を知るため談話室のドアノブに手をかけた。
談話室の中は薄暗かった。その部屋の中でソファーに掛けながら、月明かりに照らされてグラスに入った琥珀色の液体を口に運ぶ姫がいた。
「お前、なにしてんの?」
『おかえり、ベル。お酒を嗜んでるの。』
普段は誘っても絶対に呑まない姫がアルコールを口にしている。
何かあったのだろうか?
そんなことを考えながら眺めていると、彼女はまたグラスを口に運んだ。
『ベルってグランマニエみたい。』
「あ?」
『グランマニエな王子サマ。』
オレは何も言わず、そんな事を呟く姫の隣に腰を下ろした。
「お前、酔ってんだろ?」
『うん、酔ってるよ。ベルにね…』
ほんのりと赤く色づいた頬、トロンとした瞳で見つめながら好意を寄せている女にそんなこと言われれば、大概の男は理性が飛ぶだろう。
王子だって男だ。例外じゃない。
姫の後頭部に手を回し唇に軽く噛みついた。
抵抗がない。
そのまま唇を舌で割り裂き歯列をなぞり、さらに奥まで浸入させて互いの舌を絡ませた。
彼女の口からは甘く苦しそうな吐息が漏れた。
胸をドンドンと叩いてくるのでそっと顔を離してやった。
互いの唇から紡がれた銀色の糸は名残惜しそうにプツンと切れた。
『…寂しかったの、ベルに会えなくて…』
嬉しい。あまりの嬉しさに自然と口角が上がった。
「ししっ。ンじゃ、続きは部屋に行ってから…な?」
耳元で優しく囁けば、姫は耳まで赤くして小さく頷きオレの胸に身体を預けた。
グランマニエな君に酔う。
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