ヘンルーダ

「王子の姫になれよ。」

何時からだろう。奴からあの言葉を聞かなくなったのは。
煩わしいと思うほど好きと言ってきてたのに、いつの間にか聞かなくなっていた。その代わりに、毎日、同じ光景を目にするようになった。

代わる代わるよく飽きないものだなと心底思う。

一昨日ははやたらと甘ったるい香りを身に纏った赤いルージュな女で、昨日は白いワンピースが良く似合う可憐な娘。

奴の部屋には日々違う人間が入っては消えていく。皆、刹那気な吐息と単調な喘ぎ声を上げた後、余韻に浸ることなく奴のナイフの餌食になる。
あんな奴に堕ちるなんて、本当に馬鹿な女達。


ほら、耳をすませば聞こえる金切り声の断末魔。
今日もまた一人、目を金のベールで隠したままニヒルに笑う奴に喰われていった。


「なぁ、妬かねぇの?」


久しぶりに任務が重なった日、奴が私の背中にこぼした言葉に、奴に劣らないニヒルな笑みで答えた。


「妬かない。だけど       。」


さっきまで上がっていた筈の奴の口角が下がり、足元の黄色い花が嘲笑うかのように揺れた。












ヘンル ーダ(あなたを軽蔑する)








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