ただ愛されたかった


救いを求めて伸ばす手を絡め捕って、怯える瞳をのぞき込む。


「助けなんて来ないぜ。」

『い、いや…。』


そんな言葉が聞きたいんじゃないんだ。

お前で満たされたい。そう思うのは罪なんだろうか?


「なぁ、オレを求めろよ。」


震えるお前にやさしく愛撫するように口づける。

それでも拒み続ける唇を無理に割り、舌を中へ滑り込ませた。

咥内を犯すように舌を動かせば、火照った身体から甘い雌の香りが妖しく薫る。

その香りに煽られ、更に欲情した。


『…お願い、やめて…。』

「違う。王子が欲しいのはそんな言葉じゃないんだって…。」


気持ちを隠しきれないほど焦がれているのに振り向かないアイツに苛立つ。


オレの事以外は全て忘れろよ。

お前を形成するのはオレだけでいい。


ナイフをアイツの肌に滑らせ、無数の紅い線を走らせた。


「離さない。」


お前が離れていったら、オレはきっと狂ってしまう。


傷から滲み出す血を舐めれば、苦痛と恐怖に歪むお前の顔が見えた。


ごめん。そんな顔をさせたいわけじゃないんだ。

逃がしたくない、離したくない、だからすべてオレに預けてくれよ。


「オレに堕ちろよ。」


甘く、そして低く響くように耳元で囁いた。

涙も、恐怖も全てを呑み込むほどの大きな愛でお前を満たし、オレも満たされたい。


「姫、愛してる。」


早く振り向いて、王子の愛に応えてくれよ。

想いをぶつけるように何度も欲棒を打ちつけ、白濁色の欲を膣内に吐き出した。



・・・

カーテンから漏れる朝日の眩しさに目を覚ます。

隣で寝ているはずの姫に手を伸ばせば、ヌルリと紅い液体が手についた。

姫の首からとめどなく溢れる血液が白いシーツを赤く染め上げる。

手にはオレのナイフがしっかりと握られていた。


「死ぬほどオレから離れたかった?」


もう二度と答えてはくれない姫に問い掛ける。

安らかに眠るお前の顔は、オレの問いに“yes”と答えているようだった。


確かに愛していた。
だから求めた。

でも、お前を壊したのはオレなんだ。


なんで…なんでこんな結末を迎えたんだ?

オレはただ、姫に愛されたかっただけなんだ…。




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