Yes,my princess.



「ねぇ、だぁれ?」


ベタベタと腕を絡まして、甘ったるい香水匂いを纏った女が言ったセリフ。

その言葉そっくりそのまま返すわよ。なんて思ったけど口には出さない。

あー、なんだろう。
もう怒るのも、悲しむのも面倒だ。

表情を作ることすら億劫で無表情になる。

久しぶりにキミに会えるからって、気合いを入れて巻いた髪を靡かせれば品のある甘いフレグランスが香る。

足元までお洒落した証の大人っぽいヒールをワザとならして、キミの横を足早に通り過ぎた。


キミの部屋に置いておいた洋服やら歯ブラシやら、とにかく私物を全部カバンに詰め込む。

サイドテーブルの上で、幸せそうに笑いながら写る2人の写真をビリビリに破いてゴミ箱に捨てた。

八つ当たりするように乱暴にドアを閉め、鍵をする。

もう必要のない合い鍵を、ドアと床の僅かな隙間から部屋へ滑り込まして、その場を後にした。


自分の部屋に着いて早々、バスルームに直行する。


『もう必要ない。』


キミが褒めてくれたから伸ばし続けた長い髪を一つに纏めて持ち、右手で持ったナイフで切り落とそうとした。

「何してんだよ。」

『ベルこそ、何勝手に人の部屋に入ってきてるのよ。』


握り上げられた手首が痛む。
振りほどこうにも、掛かっている力が強くて振り解けなかった。


「勘違いすんなよ。あれは…」

『言い訳なんて必要ないし、聞く気ない。』


自分でも驚くほど低く冷たい声が出た。

それなのに、自然と目から溢れ出す涙は熱くて、なんだか悔しい気持ちになった。


『も、出てって…。』

「話し聞けってのッ!!」


涙を隠したくて俯いていた顔を、顎を掴まれて上を向かせられた。

『…ヤっ……。』


上を向いた私の目の前にあったのは、余裕のないキミの顔だった。


「王子が好きなのは姫だけだって。」

『あの人にも同じ事言ってるんでしょう?』

「確かに…姫と付き合う前までは軽かった。でも今はホントに姫だけだし、信じ」

『信じられない。』

「っ……あれは今回のターゲットと繋がりがある女ってだけ。任務中に一緒に消す予定。」

『嘘。』

「なんなら、証拠になるように、あの女の指でも首でも持ち帰ってくるけど?」

『いらない。』

「姫、愛してる。言葉で信じられないならさ、体で感じろよ…。」


有無を言わさず縮まる距離に息が詰まりそうになる。重なった唇は優しく啄まれていった。
むにむにと何度も解きほぐすように押し付けられては離れる柔い感触。

唇を弛ませば、滑る舌が咥内に入り込んだ。

犯されるような深い口づけに呼吸するのを忘れそうになる。

私からキミの舌に自分の舌を絡ませれば、吸い着かれて意識ごと遙か彼方へ持って行かれそうになった。


「オレの気持ち伝わった?」

『…分かんない……けど』


もう一度キスしてくれれば分かるってねだれば、三つの言葉でキミは答えてくれた。




Yes,my princess.




本気でキミに惚れてるから、感情が崩壊してしまうぐらい嫉妬してしまうんです。



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