空-カラ-
『ベル、私達……終わりにしよう。』
「…ふーん。別にいいんじゃね?姫がそうしたいならそれで。」
何時になく真剣な面持ちで姫から告げられた言葉にオレは口角をあげて、いつもと同じ様に笑ってみせた。
今日の空みたいに青く澄んだお前の目は何かを語りかけていたけど、オレはそれに気づきたくなくて何気ないフリしてその場から逃げた。
言葉はいつも遅れてやってきては虚しさ連れて教えてくれる。
今日の事もそう、後から分かるんだ。
逃げずに向かい合って、早く気がつけばいいと思うときもある。
だけど直ぐに分かってしまったら、こんなにもからっぽになったオレは歩きだせなくなってしまう。
そう分かっているから、どうにもならない歯痒さを抱きながらゆっくりと歩き出す。
あの言葉がオレに追いつくその時まで。
『…ベル……。』
なぁ、だからその目でオレを見るなよ。
悲しさならオレは感じねぇから。
それに、多分お前はオレの中にもう映らないし、オレもお前の中に映らなくなるだろ?
「…ん、じゃあな。」
・・・
空を仰げば、姫の顔が浮かんでは消える。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、くるくる変わるお前の表情を隣でずっと見てきたはずなのに今浮かぶのはあの日のお前で。
人を好きになるからには傷つく事があるのも当り前の事で、オレがもう少しその事を知っていれば、こんな事にはならなかったのかもなんて王子らしくねーけど思ったりもする。
結局、答えは今も見つからないままだ。
きっとこのまま繰り返しの渦の中また一歩踏み出してくんだろう。
多分、お前の中にオレはもう映ってはいないだろう。
だけど、忘れる事なんて出来ないオレがここに居るかぎり、お前の影をいつもどこか探してるんだ。
“ずっと傍にいてほしいんだ”なんて呟きながら…。
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