新しい始まり


暗殺業に休みなんかない。

今日もどこかで彼は華麗にナイフで切り裂きワルツを奏でているのだろう。

私は一人部屋で何をするわけでもなく、ただ時が過ぎていくのを感じているだけ。

暗い部屋にチカチカと光を放つTVの画面。

ベッドに腰掛けながら、ただソレを眺める。

誰ともわからない大勢の笑い声が部屋の中に反響しては消えていく。

寂しさを紛らわすために付けていたのに、それが嫌になって電源を落とした。


静まりかえった部屋で膝を抱え込むと、時を刻む音が妙に耳についた。

なんとなく時計を見上げれば、二つの針は零時を指している。

外からは除夜の鐘が聞こえだした。


寂しい…


クリスマス以来、一度も鳴らないケータイに視線を落とせば、自然と涙が頬を伝う。

溢れる涙を止めたくて、膝に額をつけて顔を隠した。

それと同時にガタンと窓が開き、冷たい風が背中を撫でる。


「……わりぃ、遅くなった。」


聞こえてきた愛おしい声に耳がすぐに反応する。

急いで顔を上げて後ろを向けば、口角をあげて笑う君が居て……


「ししし、迎えに来たぜお姫様♪」


“もう離れねぇから”その言葉と共に懐かしく愛おしい温もりが私を包み込んだ。


『ベル、逢いたかった……。』

「……王子もだし。これからは、ずっと一緒な。」









新しい年の始まりは、2人で一緒に歩み始める一歩からはじまる。




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