異常な程キミが好き


好きだよ。大好き。

殺したいぐらいキミが好き。


・・・・・


談話室のソファーに仰向けになって寝ていたら、いきなり大きなカエルが目に飛び込んできた。


「な〜に、ふてくされてるんですかー。」

『……。』


見目麗しく可愛い後輩フランはかなりの毒舌だ。
とてもではないが、今は彼の毒舌の相手はしたくない。
私は目を伏せ、聞こえない振りをした。


「ベル先輩と別れたって聞いたんですけどー。」

『だったらなに?』

「やっとミーとラ…」

『それはない。』

即答して、抱き締めていたクッションをフランの顔に押し付けソファーから立ち上がった。


「好きなのに、なんで別れたんですかー?」


好きだから別れたんだよ。

本当に大好きで、私の毎日がベルで埋まっていくのがすごく嬉しかった。

私からベルを取り上げたら、何も残らないってくらいベルに夢中だった。

ベルがいれば他に何も要らない。
私にとってベルが全てだった。


だけど…


だけど、ベルは違ってた。

ベルにとって私は全てじゃないし、一番でもない。

私のこんな気持ちも異常だって分かってる。


『殺したくなるから。だから別れたの。』


殺したい程好き。
でも、好きなのに殺してしまっては元も子もないでしょう?

傍に居られるだけで幸せ、なんて生ぬるいものは要らないの。

全部ほしい、殺してでも手に入れたい、なんて思ってる。

だけどそれはしない。

好きだからこそ生きていてほしいと思う私もいるから。

だから、別れたの。


『先輩嘘つきですねー。』

「うるさ…」


バタンッ!!


勢い良く開いた談話室のドア音に私の言葉は遮られた。

そこに立っていたのはベル。
口角を下げて、殺気ピリピリで如何にも不機嫌だった。


「んな理由でオレと別れたのかよ。」


盗み聞きしてたのか、王子のクセに。


『今更どうだっていいでしょ。』

「よくねぇよ。」


足早にその場を去ろうとした私の腕をベルは力強く掴んできた。


「姫がどうしてもって言うから別れたけど、オレは納得いってない。」

『何も聞かずに納得してよ。』

「ムリ。てか、殺したいってなに?殺したい程嫌いなわけ?」


違う。殺したい程好きなの。
あぁ、やっぱり伝わってない。


『ベルは分かってない。』

「…分かってないのはお前の方だろ。」


ベルの手に更に力がこもり、腕がズキズキと痛み出した。


『知らない香りを着けて帰って来たりしたじゃん。』

「ハニートラップ。」

『聞いたことない。』

「嘘だと思うならボスに聞いてみろよ。それに…好きな女にハニートラップの事なんか言いたくねぇんだよ。」

『キス冷たいし、気持ち伝わってこない。』

「はぁ?それはお前の方だろ。キスした後だってオレのこと見ようとしねぇし。」


ベルからの視線が凄く痛い。

そうだ…私は殺したい程好き、全てが欲しいって気持ちをベルに伝えたことが無い。

こんな異常な気持ち伝えられるはずもない。


伝えたことでベルに嫌われたりしたらヤだから、敢えて自から距離を取ってたんだ。


「オレは姫の事、殺したい程好き。お前の一番になりたいんじゃなくて、姫の全部が欲しい。」

『う…そ。』


私は思わず目を見開いた。

だって、ベルは一度もそんな素振り見せたことなかったから。


「嘘じゃねぇよ。初めて人を好きになったんだ。どうしていいか分かんねーし、こんな気持ち伝えたら嫌われるかもしんないだろ。」


あぁ、なんだ。最初から2人とも同じ気持ちだったんだ。


『私…殺したい程ベルが好き。』

「オレも。」


怖がらずに伝えれば良かったんだ。

異常なくらいキミが好きって気持ちをさらけ出した後の口づけは凄く熱くて、熱に侵されてる気がした。




(そういう事は人が居ないところでやってくださーい。)

(あん?クソガエルまだ居たのかよ。)

(あ、フランのこと忘れてた。)




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