背中に記す言葉
チカチカと色鮮やかな色彩を映すテレビ。
軽快な電子音に、リズミカルに叩かれるコントローラー。
せっかく2人きりでいると言うのに、彼はさっきからずっとTVゲームに夢中だ。
『ベルさーん。』
かまって欲しくて声を掛けてみるも“うっせぇ”の一言で片づけられてしまう。
寂しくて、でも離れたくなくて、細くてもしっかりとしているベルの背中に引っ付いてみた。
耳を澄ませば聞こえてくる規則正しい心音。
うっすらと浮き出ている背骨を指でなぞったり、柔らかい肌に軽く爪を立ててみたりした。
それでもベルはゲームに夢中で、真剣にテレビ向かっている。
特に嫌がる素振りも見せないし、そのままちょっかいを出し続けた。
『ねぇ…。』
「……………。」
流石に無反応のままでいるのも辛くて、私は指でベルの背中に自分の気持ちを書いてみた。
す
き
だ
い
す
き
最後の一字を書き終えると同時に、急にベルが勢いよくこっちを振り返った。
身体を預けていた私はそのまま冷たい床と仲良しになる。
しつこくやり過ぎたかなと思い、怒られる前に逃げようと体を起こしたら、腰に手を回され横に座らされた。
恐る恐るベルの方を見てみる。
画面を見るベルの表情はさっきと変わらないのに、耳だけがリンゴの様に赤くなっていた。
「…お前のせいで全然進まねぇ。可愛いことすんなよ。」
いつの間にかベルの手にあったはずのコントローラーが床にあって、私の頬に彼の手が添えられていた。
「なぁ、そんなにかまって欲しいわけ?」
『…うん。』
「ししし、素直じゃん。」
目を閉じれば柔らかな感触が唇に触れて、そこから熱が体中に伝わっていく。
それはまるで、身体全部で互いに好きと言ってるように感じた。
好き、大好き。
だから私をかまって。
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