恋に恋してた
「なに見てんだよ。」
『何が?』
「お前、さっきからチラチラ王子の事見てんじゃん。なんか用あんの?」
愛おしくて仕方ない王子様に言われて、無意識に彼を見ていた事に気づく。
だけど、好きだから見てたなんて恥ずかしい事言えるわけもなく、私は動揺する心を隠すように素っ気ない態度をとった。
『別に用なんてないし。』
「ふーん。じゃぁ、王子に興味あるとか?」
キレイな弧を描き、白い歯をみせて笑うベルに図星を突かれて焦る。
だけど、バレたくないが故に、云いたい言葉とは真逆な事を言ってしまった。
『ベルになんか全然興味ないから。』
「…そうかよ。」
途端、彼は口をヘの字に結んで黙ってしまった。
沈黙が痛い。
かける言葉も見つからず、耐えられなくなりそのまま俯いた。
興味がないなんて嘘。
ベルは私にとって完璧な王子様。
そう言ってしまえたら、きっと楽だろう。
分かってはいても、素直じゃない私は自分の気持ちをストレートに伝えることが出来ない。
だけど、トキメキは隠せないでいた。
「………。」
『………。』
俯いたまま、視線を上げてベルの様子を伺う。
本当に気になって仕方ないから、こんな状況でも心は高鳴っていくばかりで、体温もだいぶ上がっていた。
「姫ってさ、恋に不器用過ぎじゃね?」
『べ、ベルに何が分かるのよ…。』
「そういうの損するだけだぜ。」
またもや図星をつかれて何も言えなくなってしまう。
情けなくて目頭が熱くなった。
「オレ、あんまし気が長い方じゃないんだよね。」
『そ、なんだ。』
力なく受け答えしたら、ベルは盛大なため息を吐いた。
「王子の言いたいこと分かってる?」
『……わかんないよ…。』
「だーかーら、お前の恋は叶うから早く素直に気持ちを伝えろって言ってんの。」
『へ?』
不意に顎を掴まれ上を向かされる。
互いの吐息がかかるほどの至近距離に、心臓が大きく飛び跳ねた。
『あ、あの、ベル?』
「…言えよ。」
真剣なベルの声色に体温が急上昇し、体内を巡る血液が沸騰しているんじゃないかと思うぐらい顔が赤く染まった。
『あ、の…そ、の…』
「………。」
口が渇いて上手く喋れない。
とにかく落ち着きたくて、震える唇で深呼吸をひとつ吐いた。
『……好き。ベルが好、んッ……。』
やっと伝えた私の気持ちに応えるように、ベルは優しいkissを落とす。
それは乾ききっていた私の唇を潤わせ、欲していた心を満たしてくれた。
「オレも姫が好き。お前が王子を好きになる前から、ずっと愛してる。」
幸せそうに笑うベルにつられて、私も一緒に微笑んだ。
ずっと君との恋に恋してた。
でも、今日からは…
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