だからオレにしとけ
「なぁ、お前また別れたんだって?」
何をするわけでもなく、ただ談話室のソファーで寝転がっていた私を見下ろすチシャネコスマイルをした王子さま。
とても愉しそうな彼の声色にげんなりする。
『誰から聞いたのよ。』
「お前ンとこの隊の人間。男と別れた後の一週間は確実に機嫌が悪ぃんだって?」
『チッ。』
余計なことを…よりにもよってベルに話すとか誰だよ。
そんな事を思ったせいで軽く舌打ちをしてしまう。
「オフ日を独りで過ごしてるのを見れば聞かなくてもわるけどな。」
彼は相変わらず白い歯を見せたまま“しししッ”と笑っていた。
「つぅか、いい加減一般人と付き合うのやめれば?平和ボケしてる人間となんかあうわけねぇーじゃん。」
『うるさいなぁ。ベルには関係ないでしょ。てか、別れた理由は一般人特有なもんじゃないし。』
身体を起こしてソファーに座り直せば、ベルは隣に腰かけてきた。
「じゃ、なんで別れたんだよ?」
『それは…』
「溜め込んで機嫌悪くするぐれぇなら吐き出せば?」
『は?』
「王子が特別に話聞いてやるよ。お姫さま?」
耳元で優しく囁かれて、軽く肩が震える。
からかわれていると分かっているのに反応してしまう自分が悔しくて、ベルの顔を軽く押しのけた。
『兎に角うるさいやつだったのよ。“女はタバコを吸うな”とか、“そのスカートは短すぎる”だとか、“アレの日は口でして”とか…私はアンタのお人形じゃない!っうの。』
「ふーん。ま、王子的にもアレの日は口でしてほしいけど…って睨むなよ。つか、お前タバコ吸ってたっけ?」
少し殺気を含んで睨めば、ベルは思い出したかのように話を変えた。
『吸ってないよ。その日はたまたま隼人と一緒にいたから…』
「は?なんで爆弾くんが出て来んだよ。」
ベルの言葉の端に苛立ちが込められ、身体が前のめりになる。
『前に本部との任務があったでしょ?あれ、隼人と一緒の任務だったんだよ。』
「あぁ、なーる。」
『で、長い時間一緒に居たせいでタバコの匂い移っちゃったの気づかずに「会ったから勘違いされたってわけね。」
『そういうこと。』
納得したと言わんばかりに乗り出していた彼の体が元の位置戻っていった。
「んで、他には?」
『えっ?そうだなぁ…仕事があるからって言ってるのに“今日は泊まっていかないの?”とか聞いてきたり、“じゃあ次は上に乗ってよ”とか、もういい加減にしてほしくて。』
「姫さ、上イヤなんだ?」
ベルから好奇心を含んだ視線を投げかけられる。
さっきから下ネタによく反応するなぁ、この男は。なんて思った。
『イヤって言うか…その…。』
「オレは上のがいいんだよねぇ。なんなら王子の下で喘いでみる?」
『はい?』
「ししし、んで他には?」
さっきからセクハラされてる気がするのは気のせいだろうか?
そんな思いを込めてじとーっとベルを見れば、彼はまた“ししし”と笑った。
『“もっと色気出しながら脱いで”って意味不なこと言われたり、“後ろに指入れていい?じゃあ舐めさせて”って、エロ本の読み過ぎのレヴィかッ!って叫びたくなったし。』
「うししし♪レヴィかってマジウケだぜ。」
お腹を抱えて笑うベルを横目に話を続ける。
意外と話し出したら止まらなくて、吐き出せるのがこんなに楽になる事だと知らなかった。
『終いには“いつになったら潮吹くの?”なんて言われて流石に殴ったわよ。…顔だけは、いい男だったのに。』
はぁ…っと深いため息をついてうなだれる。
よくよく考えてみれば顔以外取り柄がない男だった。
『やっぱり、別れて正解だったかも。』
「そうじゃねーの。良かったじゃん、気づけてさ。」
そう言いながらベルは頭を撫でてくる。
その手が心地よく感じれて払いのける気になれない。
「話し聞いてて思ったんだけどさ。」
『ん?』
いつの間にかベルの顔がすぐ傍まで近づいている。
その距離の近さに胸が高鳴った。
「姫は俺との相性最高にいいと思うぜ。」
『…………はい?』
「だからさ、王子と付き合えよ。」
いきなりの告白に頭がついて行ってない私に、ベルはチュッと可愛らしいリップ音を立てて口づける。
その音に反応するかのように顔に熱が集まり、耳まで赤く染まった。
「王子のえっち超ウマいからさ、下でたっぷり喘がせてやるよ。」
『え、えぇぇ!!』
「ししし、大丈夫だって。すぐ潮吹かせてやるよ。」
『〜〜〜っ、こんのッ!エロ王子ーー!!』
ニンマリと笑う悪魔は抵抗する私を押さえ込み、いとも簡単に抱き抱える。
『離しッ「もういいから、黙ってオレに喰われろよ。お姫さま。」
騒ぐ私の口はベルの深い口づけで塞がれた。
王子に捕まったら逃げられない。
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