お昼寝
エアコンでキンキンに冷えた部屋で後ろから彼に抱きつく。
肩に顎を乗せれば、無造作にハネた髪が頬を掠めてくすぐったい。
そのまま首元に顔を埋めれば、彼の香りが鼻孔を擽った。
『ベルの匂いすき〜。あぁ、もう、幸せぇ〜。』
「姫、お前マジで変態だろ?」
白い歯を見せながら笑う彼をさらに強く抱きしめる。
『んー、変態でもいい。』
「ししし、まぢかよ。」
『うん。だって、私がこういう風になるのはベルにだけだもん。』
顔を埋めたまま、彼の首に吸い付き赤い花びらを散らした。
『きっと、ベルが私を変にするんだよ。』
「それはお前もだろ?」
ベルが身体を捻った反動で私は倒れ、背中と後頭部が床にコンニチハする。
仰向けに倒れた私に彼は覆い被さってきた
。
『ベル?』
「王子がヘンな気持ちになるのは姫せいな。」
口角を上げてニヒルに笑いながら、彼は私のブラウスのボタンに手を掛けた。
プチプチと片手で器用にボタンを外すベル。
外された場所から少しずつ素肌が見え始め、そこに冷たい空気が触れる。
冷房のよく効いた部屋で素肌を晒すのは寒く、少し鳥肌がたった。
『…ベル、寒いよ。』
「あん?じゃぁ、王子が温めてやるよ。」
開いたブラウスを閉じようとしていた手を掴まれ、床に縫いつけられる。
ベルはそのまま、開かれた私の胸に顔を埋めた。
『ンッ…』
ピリッとした痛みが軽く走る。
さっきのお返しと言わんばかりに、ベルは私の胸元に沢山の赤い花びらを散らした。
「うしし、キレイじゃん。」
『もう〜。』
「ヤじゃねぇーくせに、文句言うなよ。」
再び顔を埋めたベルは、スンスンと胸元を嗅ぎだす。
それがくすぐったくて、私は彼の頭を抱き抱えた。
『ベル、くすぐったいよ〜。』
「オレも姫の匂い好き。」
『へ?』
「すっげぇ、落ち着く。」
そのまま動かなくなったベルの頭を優しく撫でる。
嫌がる素振りをすることもない彼から、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
金糸雀色の髪は、鳥の羽根のように柔らかく軽やかで撫でているのも気持ちがいい。
ベルの体温と心地良い重みに私も段々眠くなり始めた。
『ベル、大好き。』
眠気に逆らうことなく目を閉じれば、あっという間に夢の中へと誘われていった。
真夏だからこそ、涼しく快適な部屋で彼とお昼寝でもしながらノンビリ過ごそう。
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