気づくのが遅すぎた
“しかし君、恋は罪悪ですよ。”
誰の言葉か忘れたけど、マジにそうだと思う。
王子が恋とかあり得ねぇって思ってたけど、このよくわかんねぇ感情を知ったら、それを認めるしかないじゃん。
・・・・・
「姫が来るまで待つから。」
確かに昨日そう言った。
指定した時間は午前11時。
左手に着けた腕時計の針は、午後1時過ぎを指していた。
つまりは2時間待ち続けているわけで、これがアイツの答えってこと…だろ?
幸せそうに笑いながら街ゆく人々、天を仰げば白い雲がゆったりと流れている。
すべてがオレをあざ笑っているように感じた。
お前がいないこの状況に答えを出すことは簡単だけど、それを認めることは困難で、オレは前に進むことも、後ろに戻ることも出来ず、此処に立ち止まっている。
お前にフラレたことを信じられなくて、信じたくなくて、いつも通りデートに誘ったんだ。
散々お前を振り回して、追いかけさせてたはずなのに、今度はオレが勝手にお前に振り回されて追いかけてる。
ただらひたすら、外に目もくれずにお前を追い求める。
それがこんなに苦しいなんて初めて知った。
ホント、息がデキナイ。
これがオレの哀しい末路なんだろうか?
お前にたどり着けずに立ち尽くしている。
・・・・・
何事もなかったかのように笑うお前と供に、世界はいつも通りに時を刻む。
一秒だけ呼吸を止めて、平常心を装いお前に声を掛けた。
冷たい眼差しで射抜かれて、何も言えずに立ちすくむ。
オレ、王子なのに…ありえなくね?
こんな風になるぐらいなら知らない方がマシだった。
偶然だったとしても、お前の温もりに触れてしまったオレは、その笑顔と仕草で優しく壊されていく。
追って、追って、追い求め続ける。
疲れても追うことを止めないから、息が止まりそうになる。
変わっていくオレとお前の関係を、何もせずに見るているだけなのが辛くて、悲しくて、怖いんだ。
もうやめよう。オレ一人だけが此処に立ち止まってお前を待ち続けるのは。
きっとオレがオレでいられなくなってしまうから。
「姫、愛してる。」
オレしかいないこの部屋で、突き返されたシルバーのペアリングに向かって、この言葉を呟くのも今日で最後。
大丈夫、長い前髪で虚ろな目は隠れるから。
さぁ、口角を上げていつも通りに笑うんだ。
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