Miss mysterious
『スク!ミスコンに一緒にでよう!!』
「は?」
ドアが壊れるんじゃないか、と心配になるほど勢いよく入ってきた彼女の第一発声に思わず目が点になる。
『だーかーらぁ、ミスコンだって。分からない?』
彼女は眉をひそめて、呆れたようにため息をついた。
そんな彼女の姿を見て思う。ため息をつきたいのはむしろ俺の方だ。
ミスコンは分かるが、なぜ俺を出場させたいのかが分からない。
そもそもミスコンは女が出場するものであって、男が出るものじゃない。
「姫、お前は俺を何だと思ってるんだぁ…。」
手にしていた書類をデスクの上に置き、右手で頬杖をつきながら彼女に聞いた。
『なんでもデキちゃう頼れる上にカッコいい彼氏。』
真剣な眼差しで答える彼女から察するに、その言葉に嘘はない。
つまり、彼女の中で俺は彼氏、男として認識されているわけである。
ならば尚更、なぜ俺をミスコンに出場させたいのか疑問になるわけで…。
「姫、ミスコンって言うのは…」
『おっ?出る気になってくれた?流石はスクアーロ!』
「あ゛?う゛ぉおい!!」
『スクが居てくれれば絶対優勝間違いなしだね!』
人の話を聞かずに、独り盛り上がる彼女。
こんなに近くにいるのに、なぜか遠い人のように思えた。
『一瞬たりとも気を抜けない舞台だからね!!』
遂にはミスコンについて熱く語り始めている。
自分の恋人がここまで天然いや、アホだとは…思わず開いた口が一向に塞がらない。
満面の笑みを浮かべた彼女が、何も言えずに固まっている俺に振り返る。
振り返った反動のままに俺の唇に自分の唇を重ねてきた。
一瞬、何が起きたのか分からず思考が停止する。
キスをされたのだと認識した時には彼女の唇は離れていた。
『スク、一緒に頑張ろうね。ミステリアス・コンバット大会♪』
「お、おう゛…。」
色々とツッコミたい事は多々あるが、取り合えずは可愛い恋人の為にがんばろうと思う。
ミス・ミステリアスな彼女にミスコンの優勝の約束を…。
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