pioggia


嫌がる人が多いけど、私は雨が好き。
だって、大好きな人が迎えに来てくれるから。



「そんな所でなにしてんだぁ?」


雨が降ってきたのが窓から見えたから、外に出てその冷たい雫と戯れていた。

そんな私に呆れた声を出して近づいてくるスクアーロ。

私の大好きな人。


「傘も差さねぇで、風邪ひくぞ。」

『雨、好きだからいいの。』


見上げれば鉛色の雲に覆われた空から零れ落ちた雨が私の顔を濡らしていく。

その心地良い冷たさに目を閉じた。

しばらくそのままでいると、雨とは違う感触が頬を伝うのを感じた。

背中から伝わる熱と規則正しい鼓動が聞こえて、彼に抱きしめられていることに気付く。


「体、冷えてるぞ。」

『うん。』


私を抱きしめる大きな手に自分の手を重ね、静かに目を開いた。

白銀の髪を雨滴が伝い地面に落ちている。


『水も滴るいい男だね。』


そんな言葉に耳まで赤くする彼がすごく愛おしい。

照れ隠しのように何度も重ねてくる唇。
軽かったはずのキスは次第に深いものへと変わっていった。

聞こえるのはしとしとと降り続く雨音と2人の吐息だけ。

甘美なこの時間にずっと溺れていたい、そう思いながら彼からのキスに応え続けた。



・・・・・

ゆっくりと離れる唇を銀の糸が結び、プツンと名残惜しそうに切れる。

いつしか雨は止んでいて、雲の隙間から光が射し込んでいた。


『雨止んじゃったね。』

「あぁ。」

『キスしたからかな?』

「そうかもなぁ゛。…戻るぞ。」

『…ん。』


差し出された彼の手に、学生の時の情景が重なった。


雨が降った日は必ず迎えに来てくれたよね。
スクアーロの姿を見つける度、すごく嬉しくなったんだよ。


あの時と変わらない彼の手を取り歩き出す。

私達の後ろに広がる空には今も昔も変わらず、七色の虹が輝いていた。







雨が好き。
だって、大好きなアナタが迎えにきてくれるから。





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