愛してない

仕事柄いつ死んでもおかしくないと理解していたし、顔を合わせて話していても、次の瞬間には会えなくなることだってあるんだと覚悟も出来ているはずだった。

アナタが包帯で全身を包んで帰ってきたあの日までは…


少し薬品の匂いがする真っ白な部屋。その部屋のベッドで静かに横たわる彼。

ドアに背中を預け、もたれるようにして立ちながら彼の方を向いた。

『スクアーロ、私達 別れよう。』

「…あ゛ぁ゛?」

『もう、スクアーロのこと愛してないの。だから…』

「俺は愛してるぜぇ…」

『っ…』

「そんなとこで泣いてねぇでこっちにこい」

ナイテル?ダレガ?…ワタシガ…ナイテル…?

「…抱きしめてぇんだ。」

優しくしないで、引き留めないで。そう思っていたはずなのに…。
気づけば私はスクアーロの腕の中にいて、傷だらけの彼の背中に腕を回して強く、強く抱きしめていた。

仰げば穏やかな表情を浮かべる彼の顔があって、全てを包み込むようなキスが何度も何度も降り注いだ。

アナタを失いたくない。
アナタから離れたくない。
アナタを守れるくらい強くなる。

だから…

「ずっと一緒だぁ゛」

『…うん。スクアーロ、愛してる。』

君が想うよりもっと…



abcの『愛してない』を聴いていて思いついた文章。
場面的にはリング争奪戦直後のスクアーロと彼の恋人のお話。

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