伝え続ける

頭の中で聞こえる愛を囁く君の声が掠れていく。

私の心を揺さ振り熱くするその言葉を、今はもう聞くことが出来ないなんて信じたくない。



・・・・


「姫。」


瞳を閉じて記憶を辿る。

鮮明な記憶の中で君はいつでも優しく微笑んで、私を名前を愛おしそうに呼ぶ。


あの日、君のことを止めていたら未来は変わったのだろうか?


来ることのない二人の時間を思うと涙が溢れでた。


君の声、香り、抱き締めてくれた温もり、忘れらてないよ。


ずっとずっと、あの幸せな時が続くと疑ってなかった自分が恨めしく思えて、鏡に映る自分に怒りをぶつけた。

握りしめられた拳からは、鮮やかな紅が流れ出す。

それを痛いと感じないのは、肉体的な傷よりも心の傷の方が明らかに深く抉られているからなのだろう。

いくら耳を塞いでも、君が最後に言った言葉

「お前の為に、ちゃんと帰ってくるからなぁ。」

が耳なりの様にずっと鳴り止まない。

君を失ったあの時から前に進めないで、行き場のない渦巻く感情のまま周りに当たり散らす。

荒れ果てた自室は今の私の心の中そのものだった。


逢いたくて、逢いたくて、声にならない声で君の名前を呼び続ける。

いくら呼んでも君は来てくれないって分かっているのに、悲しくて苦しくて…。

一人の夜が怖くなって、開け放った窓から夜空見上げて君を探した。


『スクアーロ…。』


ひときは明るく瞬く星に手を伸ばす。

鈍く光るのは君がくれた指輪。


『ねぇ、遠い遠い世界でスクアーロも指輪を付けてくれている?』

今もつけているこの指輪は、君と私の永遠の証。


『もしも、この声が届くなら…』


どこかで私を見守ってくれてる君に届くように伝え続ける。


『ずっと愛しているから…。』


どんなに景色が移り変わっても、この言葉を君に送りつづけると誓おう。










私の命が燃え尽きる、その時まで。



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