溺死愛



『ベルのこと好きなの。』

「ごめん。」


私の人生初の告白は、たった一言で見事に打ち砕かれた。

あの後どうやって彼と別れたか分からない。
気がついたら此処に浮かんでた。

傷心のせいか身体に力が全く入らない。おかげで私は沈むことなく、この湖に浮いている。

月明かりに照らされて水面に漂う。
このまま水に溶けてしまえたらいいのに。そんな事を思ってしまう。

いくら気候が温かくなってきたとはいえ、まだ皐月。
水に浸かるにはまだ早すぎたようで、私の身体はすっかり冷え切っていた。


『…ベ、ル…』


頬を伝う涙だけが温かい。
昇華仕切れない恋心が溢れ出る。

苦しくて、切なくて、私は湖の底へと身体を沈めた。



キラキラと輝く水面。全てに別れを告げるように口を開き水を肺に流し込む。


―――バシャン―――


突如として歪む水面。私を抱え湖から引き上げる大きな手。


『ゴホッゴホッ…』


飲みかけた水を吐き出し私を引き上げた手の主の方を向いた。


『…スクアーロ?』

「こんな処で死ぬつもりかぁ?」


灰色の瞳で見つめ、諫めるように私を腕の中に閉じ込めた。


「溺れるなら俺に溺れろぉ。」


私を抱える腕に力が入り、壊れるほど強く抱きしめられた。


「俺の愛で溺死させてやるぜぇ。」


規則正しいスクアーロの鼓動。心なしか少し早い気がする。


『…あったかい。』


冷え切っていた身体も心も、スクアーロからの熱で温まって行く。


「今すぐに俺を好きになれとは言わねぇ。お前がどれだけアイツを想ってきたか知ってるからなぁ…。」


スクアーロの胸に頭を預けたまま天を仰ぐ。
切なそうな彼の顔が見えた。


「少しずつでいいから、俺のことを好きになってくれねぇか…。」


いつもとは違う静かな声に彼の真剣さが伝わってきた。


『窒息してしまうぐらい愛してくれる?』

「あぁ、約束するぜぇ。」


震える私の唇が彼の熱い口付けで温まっていく。

息をするのも忘れてしまうぐらい、永く甘いキスに酔いしれる。


「俺が姫を幸せにしてやるからなぁ。」


彼の言葉に胸までもが、少しずつ熱くなっていく気がした。










この傷がアナタの愛で癒されたとき、私はきっとアナタに溺れているでしょう。






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