初めてのデートです。


『すいぞくかぁん♪』

久々のレジャー施設に心も足も浮き立つ。

階段の途中から大きくジャンプをして、下まで降りようとしたら着地で転びそうになった。


『うわッ!!』

「う゛お゛ッ!?はしゃぎすぎだ!」


危うく顔から地面にコンニチハしそうになった私の体を、スクアーロは咄嗟に両腕で抱え込み助けてくれた。


『あ、ありがとう。スク。』

「ッたく、危なっかしい奴だなぁ。」

『あはは。』


笑ってごまかそうとすれば、呆れたと言わんばかりにスクアーロはため息を吐いた。


「姫、手貸せぇ。」

『へ?』


彼の言ってる言葉の意味がすぐには理解できなくて、間の抜けた声がでる。


「手繋いでりゃ、転ぶ心配も、はぐれる心配もしなくて済むだろうがぁ。」


そう言って彼は私の手を取り歩き出した。

手を繋いで歩くなんて、入隊したての時ならよくしてたのに久しぶりの今はなんだか気恥ずかしくなる。

繋いだ手が熱い。その熱が腕を伝わって顔から耳へと広がっていく気がした。


「で、何から見るんだぁ?」

『え、あっと…スクアーロ!』

「う゛ぉ゛!?」

『あ〜違う違う、スクじゃなくて鮫のこと。ジンベイ鮫がみたいの。』


期待を裏切らないボケをしてくれたスクアーロが可愛くて、思わず笑みがこぼれた。

私の歩調に合わせて歩く彼に寄り添ってみる。


「どうしたぁ?」

『うーん。なんとなく。』


彼の優しい眼差しを独り占め出来ることに優越を感じながら、ゆっくり館内を見て回った。




・・・


『コレ可愛い〜♪』


自分の背丈と変わらないほど大きなサメのぬいぐるみを抱きかかえる。

ふわふわとした柔らかい肌触りに、デフォルメされたクリクリの目が愛らしい。


「そんなデケェぬいぐるみをどうするつもりだぁ?」

『一緒に寝るの、抱き枕的な感じで。名前はスクにしようかなぁ。』

「う゛お゛…ぉぉい。」


些か複雑そうな表情を浮かべたスクアーロを横目に、そのサメを抱いたまま他のお土産を物色する。


「姫、いい加減それを戻せ。」

『いや。これ買う。』

「そんなに添い寝が必要なら俺がしてやる。だから戻せぇ。」

『へ!?』


抱えていたサメのぬいぐるみを落としそうになる。

彼はすかさず緩んだ私の手からサメを取り上げると、元在った場所へと戻した。


『あーーッ!』

「これからは“一緒に寝る”も約束に入れねぇとなぁ。」


ニヒルに笑う彼は実に愉しそうに妖し気で、逆らったらいけないと本能的に悟った。











嬉し、恥ずかし、楽しい初めてのデートで約束事項追加みたいです。




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