恋と言う字を検索します。


「お前、スクアーロと付き合うって本気?」


任務も終わり、談話室でリア姐の淹れてくれた紅茶と手作りのロールケーキを頬ばりながら幸せなひと時を過ごしていた私に、ベルは突然尋ねてきた。

隊服である黒いジャケットではなく、赤と黒のボーダーのパーカーを羽織っているところから察するに、今日彼は珍しくオフだったのだろう。

そんな彼の私服をさりげなくチェックしながら質問に答えた。


『付き合うと言うか、スクに恋することにしたの。』

「はぁ?」


訳が分からないと言うような声を出して、ベルの口は開いたまま閉じられないでいる。

彼の言葉を借りるなら“口あんぐり”な状態だ。


『恋がしたくてさ。』

「なにソレ?姫はカス鮫の事が好きなわけ?」


恋愛感情かどうかはさておき、好きか嫌いかと聞かれれば、好きだ。
だから、そのまんまの意味で答えた。


『好きだよ。』

「お前さ、ソレは恋愛の好きじゃねぇだろ。」

『う。…だって、分かんないんだもん。恋したことないし。でも、恋したいし。』

「なら、オレでもよくね?」


口角を上げて笑うベルを見て、なぜかため息が出た。


『ムリ。』


あからさまにダルそうな声で否定すれば、ベルの口角は下がり、口はへの字に結ばれた。

「即答すんな。」

『だってベルとは兄妹みたいな感じだし、恋愛とか考えられないよ。』


苦笑いしながら話す私の頬を鋭い風が掠める。

後ろに目を向ければ、悪魔の羽根のような独特の形をした刃のナイフが壁に刺さっていた。


『危ないじゃん!!ベルの馬鹿!!』

「馬鹿はお前だろ。」


“恋愛対象になるか?”と聞いてきた時のスクアーロと同じくらい真剣なベルの雰囲気に、足が竦む。

前髪で隠れていて見えないはずなのに、彼が今どんな目をしているのかが分かる気がして、思わず顔を背けた。


「目、背けるんじゃねぇよ。」

『…だ、だって…。』

「スクアーロになんかに余所見させねぇから。」


遠ざかる足音が聞こえなくなるまで、私は俯き続けた。





恋愛初心者の私は、“恋”と言う字を検索することから始めるしかないらしい。




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