今日から恋はじめます。


“恋がしたい”

年ごろの女の子ならだれもがそう思うんじゃないのかな?

私だってそう。

齢6にしてヴァリアーに入隊して早10年。
いつの間にか幹部になってたし、毎日毎日、暗殺に明け暮れてて、年ごろの女の子らしい事なんかひとつもできてない。

だかこそ、恋ぐらいはしたい。







『だからね、恋がしたいの。』

「う゛ぉおい…そんなこと俺に言って何か解決するのかぁ?」


入隊当初から兄のように慕っているスクアーロに何となく相談してみた。


『だって、スクは恋愛経験豊富でしょう?私に恋の始め方を教えてくれるんじゃないかなぁって思ったわけですよ。』

「はぁ…。姫、お前は今現在、好きな奴はいるのか?」


義手で頭をガシガシと掻きながら聞いてくるスクアーロにきっぱりと“いない”と答えれば、頭を軽く叩かれた。


「う゛ぉぉおい!!好きな奴もいねぇのに、恋なんか出来るわけねぇだろうが!!」

『いや〜、だってさ。私の周りにいる男って、ボス・ベル・スクぐらいなわけよ。』

「1人抜けてねぇか?」

『リア姐さんは乙女だよ、スク。』

「……まぁ、いい。」


多分、雷オヤジのことを言ってるんだろうけど、そこは敢えてスルーする。


『で。ボスはあくまでボスなわけだから恋愛対象じゃないし、ベルとは兄妹みたいに育ってきちゃったから男認識ないし…。』

「俺はどうなんだ?」

『へ?』

「姫の中で、俺は恋愛対象になるのか?」


真剣に聞いてくるスクアーロに思わずたじろいだ。

確かに、ずっと兄のように慕ってきてはいたが、明らかにベルとは何かが違う。

それが何なのかと聞かれれば、答えは“分からない”だ。


しばらく真剣に考えてみたが、なぜかこの沈黙した空気に堪えきれなくなり、とりあえず分からないと答えようとして口を開いた。


『スクは恋愛対象になる…と思う。』


彼と目を合わせたら、自然と言おうとしていた言葉と違う言葉がでていた。


「なら、俺にしろ。」

『ふぇ!?何が?』


間の抜けた声を上げてスクアーロに顔を向ければ、“チュッ”と可愛いリップ音を立てて唇を奪われていた。


「俺に恋しろってことだ。」


ニヒルに笑う彼に、私はコクコクと頷くしか出来なかった。







私、今日から恋はじめます。





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