愚かなる人
2013/08/08 21:57
「メフィストが好き。」
「いつまでそんな戯れ言を言うつもりですか?」
夢の中だというのに貴方は現実と同じ様に私を突き放す。
目の前で翻されたマントの端を掴み貴方の足を止めた。
「メフィスト、これは夢なのでしょう?」
「そうですね。」
表情を変えずにそう答える貴方に胸が痛む。
「それなら…せめて夢の中だけは優しくして欲しい。」
溢れ出す涙と供に吐き出された私の言葉に貴方は笑った。
「いいでしょう。では、夢の中だけは優しくしてあげます。」
貴方の手が私の頬に触れ、長い指が優しく涙を拭った。
軽く口角が上がり微笑んでる貴方の顔が近付く。触れ合う唇に胸がまた痛んだ。
悪魔に恋している。私はなんて愚かで滑稽な人間なのでしょう。
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