繋ぐ
2012/11/07 22:21
「荷物はまとめたが、入院中にほしいもんがあったらすぐに電話しろぉ。」
大きな鞄を持ちながら私に微笑みかけるキミを見ていられるのも、あと少しなのかと思うと悲しみよりも寂しさが心に募る。
「それ、何でもいいの?」
「あぁ、何でもいいぜぇ。」
「じゃあ、今から病院まで手繋いでほしい…な。」
最期までキミのぬくもりを覚えていたいから。
「う゛ぉッ!?」
「何でもしてくれるんじゃないの?」
驚くキミをじっと見つめれば、革手袋のついていない方の手が静かに差し出された。
「…早く手を貸せぇ。」
「ふふ、最初で最後だね。」
キミの困ったように照れる顔も、不器用な優しさも全て私の中に刻み込もう。
それがキミが私を愛してくれていた証なのだから。
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