「久しぶりに出かけるやんね」




黄名子ちゃんから連絡がきたのは、ほんの数時間前のことだった。黄名子ちゃんと出かけるのは楽しいし、私はすぐにオーケーしたのだが、おかしいなぁ。ついこの間黄名子ちゃんと映画に行ったはずなんだけど…。まあ、あまり気にしないことにしよう。それから私は精一杯のおしゃれをして待ち合わせの時間に間に合うように家を出た。

待ち合わせ場所の噴水の前につくと、既に黄名子ちゃんはいて。駆け寄ると彼女はゆっくりと顔を上げた。……あれ?
私が立ち止まると黄名子ちゃんは立ち上がって私の方に駆け寄ってきた、そしてそのまま私に強く抱き付く。


「黄名子ちゃん…?」
「……ふふっ」
「どうか…したの?」
「ごめん、すごく…久しぶりだなって」
「どういうこと?」
「ふふっ、なんでもないやんね」


黄名子ちゃんは小さく笑って、私から離れる。そこできちんと黄名子ちゃんの顔を見たのだが、やっぱり。なんて表現したらいいのか分からないけど、…なんていうのかな。なんだかこの前会った時より大人っぽくなった…、って言ったらいいのかな。わかんない。でもひまわりのように優しく笑う黄名子ちゃんを見ていたら、いつの間にかそんなことは気にしないでもいいのかなって思えた。


黄名子ちゃんと、最近できたショッピングモールを歩く。二人でお互いに似合う服を持ってきて小さなファッションショーをしたり、きらきらと輝るアクセサリーを見てため息をついたり。といっても二人とも中学生だからお金なんてなくて、本当に見るだけなんだけど。
ちょうどお昼時になって、二人で小さなカフェに入る。私がパンケーキのセットを頼んで、黄名子ちゃんはにんじんのサンドイッチを頼んだ。ごはんがくるまで、二人で他愛のない話をしていたら、ふいに黄名子ちゃんが溜息をはいた。どうかしたのかと問いかけると、黄名子ちゃんはまた小さく笑った。…やっぱり、なんだか黄名子ちゃん…。私が少しだけ考え込むような仕草を見せると、黄名子ちゃんは慌てて謝ってきた。



「今の溜息には深い意味はないんよ」
「うん、わかってるよ。ただ…今日の黄名子ちゃん、なんか違うなって」
「!…やっぱ名前はウチの親友やんね、すぐにばれちゃう」
「ばれちゃう…?なにが?」
「……ウチね、子供ができたんよ」
「!!!!」


とても驚いて黄名子ちゃんの顔を凝視する。そんなことはありえない、ありえないと思ったが…彼女の顔は真剣で、とても冗談を言っているようには思えなかったから。
私が何も言わないので、黄名子ちゃんは少しだけ驚いたような表情をしたけど…また小さく笑って、話を続けた。



「優しくて、でもとても傷つきやすい子なの。ウチが、守ってあげなくちゃってずっと思ってた」
「……」
「たくさん旅をしたよ。あの子も、一緒に旅をして…大きくなった、ウチも…大きくなれたよ」
「…頑張ったね、黄名子ちゃん」
「……信じて、くれる?」
「うん。黄名子ちゃん、お疲れ様だったね」
「……やっぱり、名前と一緒にいると落ち着くやんね」
「…私もだよ」



それから、黄名子ちゃんの体験した未来や過去についての話を聞いた。そこでかけがえのない絆を結んだって聞いて、考えた。
私の未来は、どんなだろうって。

それは分からない、未来のことなんてふつう…わからないもの。黄名子ちゃんの未来だって、まだ分からない。彼女の見てきた世界の通り進むとは限らないから。
ただ一つだけ言えることは、大切な友達とずっと幸せでいられるような世の中がきますように。それだけ。


私は自分の白い髪を無意識に触った。これからどんな出会いがあるんだろうか。……どんな出会いがあるとしても、変わらない大切なものを守っていきたいと思う。




20131225

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