待人たちの恋 | ナノ

01




俺の親友、結城 薫(ゆうき かおる)
彼は学校で一番目立つ。赤髪だから?それは違う。彼はなんというか、こう、すごいのだ。


成績優秀。学年主席は誰にも譲ったことがない。
俺はよく勉強を教えてもらっている。

スポーツ万能。喧嘩も強い。身体能力も高いが、何と言っても彼は怪力だ。低い身長もカバーする、その怪力のおかげで不良に絡まれることはない。不良みたいなナリした俺を、ガチな不良から守ってくれることもある。

容姿端麗。俺が一番羨ましいのは、目元。睫毛は長く、下睫毛もしっかり生えてる。青緑の瞳は、その甘い目元を引き締めている。シュッとした鼻。その下には、いつも余裕があってセクシーな口がある。程よい厚さの唇から放たれる、紳士的な言葉遣いに女子はメロメロだ。俺には暴言ばっかりだけど。

おまけに生徒会では風紀委員長。なんかモテそうな役職。次期生徒会って噂されていてる有望株。


そんな彼を見つけるのは、容易い。


放課後、生徒会の仕事が休みと聞いて、俺は薫と帰れると内心喜んでいた。ところが、帰りのHR後。教室に鞄を残して薫は消えていた。

パッと思い付いた放課後の校舎裏。そこは告白スポットで有名だ。

俺が校舎裏に足を運ぶと、やはり赤髪の彼がいた。正面には女子、ということは言わずもがな告白タイムだろう。…今まで薫に告白してきた女子の中で、一番可愛いな。そう呑気に思っていたが、人の告白を盗み聞くのも悪いし、鞄も教室だから戻るだろうと思い、Uターンした。その時だった。

女子の啜り泣く声が聞こえ、振り返ると薫が女子の頭を撫でていた。そしてハンカチを渡し、優しく声をかけている。

薫は必ず、女子の告白を断る。そして紳士的な優しい口調で宥め、嫌いにさせてくれないのだ。そんなことしたら、次の恋に進めないだろうに。俺はUターンを再開し、歩き出した。薫は、ずるい。そう思いながら。


「お、準一。帰るところ?」
「あっ、薫ちゃん!えっと、お迎えにあがったよ〜!」
「…本当かよ。なら鞄持ってこいよ、馬鹿。」


相変わらず俺には厳しいけれど、特別な感じがするから、好きだ。


「つ、つーかまた断ったんだ?今の子、今までの女子の中で一番可愛かったじゃん。」
「見てたのかよ…可愛いとか置いといて、俺あんまり興味ねーしな…。」
「そっかぁ…。」


俺の唯一の友であり親友である薫を、俺から奪うとしたら彼女の存在だろう。しかしそんな心配はいらない。だから、俺は油断していたんだ。


「教室空いてるよな?もう皆帰ってるっぽい…。」


教室の扉を開く薫の手が、扉を開ききる前で静止した。教室を覗くと、黄色い瞳が薫を捉えていた。


そう、油断していたんだ。


まさか男に取られるなんて、思ってもいなかった。




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