ウソツキマイヒーロー


 屋上にはヒーローがいる。
 というか、幼なじみのバカが。


 全体的に色素が薄い、イケメンの、自称ヒーローは腹を出して学校の屋上で熟睡していた。
「おい、サトル起きろ」
 何度起こしても起きないサトルの鼻を摘む。強く強く。……本当こいつの端正な顔が歪めばいい。
「ふぇ……いひゃいいひゃいやめて」
 指が鼻にくい込むかのような勢いでサトルの鼻をつまめば、流石に起きたサトルは泣き顔で鼻を押さえた。
「……ナナちゃんの意地悪」
 精神年齢が確実に5歳児のサトルはむすっとした顔で私の顔をにらんだ。
 ああもう、真剣に、なんで私はこいつのことが好きなんだと自分で自分に問い掛けたくなった。
 家がおとなりさんという単純な理由で仲良くなったこいつと私の関係は今だに友人の域をでていない。
 私が捻くれすぎてて好きなのに好きって言葉に出せないのも理由なのかも知れないが、多分原因の大多数はこいつにある……と信じている。
 こいつは、自称「ナナちゃんのヒーロー」なのだ。鬱陶しい。しかも、自称するだけで何もしてくれない嘘つき野郎だ。そのかわり、他の女子には紳士的なサイテー野郎だ。
 普通ヒーローって言われたら期待するよな? だけどこいつはヒーローなんて働きは一度もしてくれたこともなく、好きになった私がバカみたいだ。というか、私は間違いなく馬鹿だ。
「サトル、予鈴がなった。授業出るぞ」
 こいつを起こした原因を適当に告げると、私は立ち上がった。
「えー……サボろうよ。ナナちゃんも一緒に」
 一方サトルは立ち上がる気もないのか、いやにゆったりとあぐらをかいた。
「っていうかヒーロー君がそんなこと言っていいんですかーサトルくん」
「それとこれとは話が別。さあさあナナちゃんめくるめくサボりの世界へ」
「サトル」
「何? ナナちゃん愛の告白?」
「うざい」
「ナナちゃん酷い!!」
 口ではそんなことをいいながらもサトルの隣に腰をおろしてしまう私はもう病気で言うと末期症状だ。間違いない。甘い、あますぎる……。
「ああもうなんだかんだ言ってナナちゃんは可愛いわー」
「うるさい。バカ」
 しかめっつらでサトルを睨むとサトルは笑顔を浮かべるだけ。なんだかこういうことされるの落ち着かない。
「うざいヒーローもこの世にはいるんだな」
「ナナちゃん限定だよー。ヒーロー全般のなかで一番じゃなくてもいいの! ナナちゃんの中で一番であれば」
「……ごめん」
「なんで謝るのナナちゃん!!」
 いやいや本当はサトルが私の脳みその大半しめてるし、一番なんだって言ってやりたくなる。だけど言わない。多分一生言ってやらない。
 彼女が出来るまで一生振り回してやる。私の嘘つきで子供なヒーロー君を。











ヘタレヒーロー。ヒーローが好き。

エデンと融合様に提出!

(11/04/04)








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