私は、この小さな部屋に二人で暮らしている。
美しい女の子の人形と私で、暮らしている。
女の子は私より身長が高くて綺麗な子だ。
女の子は目を開けさえしてくれないから私は少し寂しい。
女の子が自分で美しい目を開いてくれたり可愛い口で喋ってくれたら嬉しいのに……。
私はいつも願っている。
だけど願いは今のところかなっていない




私の一日は女の子の髪を梳かすことから始まる。
金色の綺麗な髪を丁寧に、丁寧に。
女の子の髪は絡まり易くて、抜けやすいから、梳かすのが大変だ。
しかも髪が長い。
いっそのこと切ってしまおうかともおもったけど、切った髪の毛の処理が面倒なので結局やめた。
女の子の髪をサラサラになるまで梳いたあとは、服を着せてあげる。
私的に、薄い青色が女の子の髪とあっている気がして、薄い青色のドレスを女の子によく着せる。
今日は、空が晴れていて太陽が眩しかったからオレンジ色の明るいドレスを着せることにした。
そうして女の子の下着を変えて、ドレスを着せて、椅子に座らせた。
そして、今にも動き出しそうな彼女に化粧をする。
チークほんのり赤く多めに、
ルージュはピンクの桜色、
アイシャドーは少しのせるだけ。
この子と暮らすようになってから私のメイクの腕は格段に上がった。
最初は恐ろしいメイクをして、自分でも怖くなったものだ。
古い雑誌なんかを読んで研究しているうちに大分上手くなった。
これで女の子の準備が整った。
モノ言わない人形の女の子。
まるでお姫様みたいだ……と思ったけど。
王子様は迎えにこない。
来てくれればいいのにねと女の子に笑いかける。
残念ながら女の子は目を覚まして微笑んではくれなかった。
食事を準備する。
女の子と私の分。
お父さんは起きてこないので、仕方なく私と女の子だけで食べる。
女の子の前にご飯をおいても食べないのはわかってるんだけど、何となく置いてしまう私の癖。
お父さんはまだだろうか。
もうかなりの時間待っているけど。
目を覚まさないお父さんに辟易しながら食べ終わり、食事を片付ける。
お父さんが来ないのは仕方がないことなのに私はイライラする。
そういえば、私はご飯を食べるのが速い方だと思う。
普段の量なら5分くらいで食べ終わるし。
私の仲間のなかでも一二を争う速さだった。
今では仲間に会うことも出来ず、こもりがちの私だけど昔は沢山仲間がいたとおもう。
あれから大分たったけどみんな元気にしてるかな……。
あれから私はお父さんと女の子と以外誰とも顔を合わせていない。
寂しいと思う。
だけど仕方がないと思う。
悲しい気分になってきてしまったから私は女の子を抱きしめた。
冷たい。
さらに悲しくなった。
結局お父さんは目が覚めなかった。仕方がない。
私のお父さんは死んでしまいそうだった。
だから今はお父さんは眠っている。
人間は歳をとるから悲しいと思う。
女の子は歳をとらないんだと思う。
お父さんが起きるときはこの女の子が起きるときだと思う。




人間は愚かだ。
最終世界大戦で国土も何もかもが破壊されて今、世界はボロボロだ。
同じ人類なのにどうしてあらそうのかな。
シェルターにいたお父さんは助かった。
だけど……隣のシェルターにいた女の子は助からなかった。
女の子はあの日以来眠り続けている。
お父さんは、微弱な放射能を浴びて、もう死にかけていた。


そこにわたしもいた。
お父さんは科学者だった。
私は、お父さんによって造られたロボット。
お父さんが造った私以外のロボットはみんな多分壊れてしまった。
たまたま、外にでていたから。
私に命令するとすぐお父さんは眠りについた。
人工冬眠して、女の子が起きたら起こせ。
ガラスの中の、女の子。
私は、その女の子の世話を続けている。

最終戦争から多分200年以上はたっている。
それでも私は、壊れるまで動き続けるのだろう。
女の子が、目覚めてお父さんが目覚めるまで。

私は、今の外の世界を知らない。
シェルターにはパスワードがかかっていて、突破できなかった。

だから、私は、女の子を世話し続ける。
ガラスの中の、動かないニンギョウみたいな女の子を・・・。





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(11/02/20)