ある冬の日の後悔 | ナノ
チェックのマフラー



千鶴と別れて一人になるとずいぶん静かになった。アルコールのせいもあって、自分の家へとゆっくりとした足取りで歩いて行く。

風が身に染みてぶるりと体が震えた。ああ、彼女と話をしたのも、これくらい冷え切った冬の日だったなぁと思い出す。

今思えばあんなたいしたことない理由で怒って、喧嘩して、意地張って、謝らないまま卒業したなぁ。今まであまり考えないようにしてたけど、あの頃薄々感じていた後悔が今になって急にどっと胸に押し寄せてきた。

もう少し、大人になっていれば。でも俺は、俺たちは、まだ子供だったんだ。

少し大人になった今ならわかる気がする。高校生はまだまだ子供なんだって。

チェックのマフラーに顔を埋め、目を赤くして俺を見上げていた彼女の顔が浮かんできた。俺のことを問い詰める度に、彼女の白くなった息が冬の空に消えていた。

名前。俺、あの時、


「…………祐希?」

「…………え?」


地面から目線を上げると、声の主と思われる女の人が目の前に立っていた。


「………名前」


その女の人は今俺の頭の中をいっぱいにしていた名前本人で、名前はあの時と同じようにマフラーに顔を埋めていた。


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