その手をずっと | ナノ
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バレンタインから数日後のお昼休み。私たち6人は食堂でお昼をすませたあと、残りの休み時間を空き教室で過ごしていた。


「今日帰りにゲーセン行こーよ!新しくできたやつ!」

「久々に任務でもこなしますか」


相変わらず元気な千鶴に祐希くんがのっかる。彼はゲームならほとんど得意らしい。夏休みに祐希くんの家に遊びに行った時も上手にテレビゲームしてたし。


「まぁ祐希が行くなら俺も…」

「そうこなくっちゃゆうたん!要っちも春ちゃんも行くよね!」

「はい!」

「俺はパス」

「なんだよノリわりぃなー!いいよ、要っちだけ仲間外しにするから。なっちゃんは行くよね?」

「あーごめん、私もパス」


はた、とみんなの動きが止まり、視線が私に突き刺さった。


「なんで!?なっちゃんはいつも俺に付き合ってくれるのに!」


口を尖らせ、拗ねた表情をする千鶴。申し訳ないと思いながらも、さっきから弄り続けている携帯の手は止めなかった。


「そういえばさっきから誰にメール打ってるんですか」

「んー…まあ誰でもいーじゃん」

「よくないです」


そう言って私の携帯を覗き込む祐希くん。左に少し目を向ければすぐ祐希くんの顔があって驚いた。恥ずかしいから俯いて携帯の画面を見る。


「最近なっちゃん付き合い悪いよなー!授業中ちょっかい出しても無視だし」

「それは千鶴が悪いよ」


悠太くんがそう言って千鶴を見る。


「ゆうたん、それはゆっきーだってやってるよ!ゆっきーも相手にしてもらえてないけどね…って痛っ!なにすんのさゆっきー!」


祐希くんが私の右隣にいる千鶴を叩いた。叩いた本人は「知らないぷー」と言ってしらばっくれている。“ぷー”だって。


「ねーなっちゃん!行こうよ〜!」

「ごめんってばー今日は用事があるから無理なのーだからまた今度行こうよー」

「絶対嘘だ!棒読みにも程があるよ!!」


勢いよく千鶴が飛び付いてきて、祐希くん側に大きく傾いた。…やっぱり、千鶴にくっつかれてもなんとも思わない。視界に入った触覚の動きが気になるだけだ。


「用事って、さっきからメールしてる奴と会うことなんでしょ」

「何で知って「さっき見えた」

「デート!?デートなのなっちゃん!」

「もー千鶴うるさい」

「しまいに彼氏とデートなんて言われちゃー、もう俺のことは誰にも手がつけられなくなっちゃうぜ!暴れちゃうぜちーさまは!」

「………」

「やーい千鶴、無視されてやんのー」

「…あのさ、」


私が口を開くと、5人が一斉に喋るのをやめた。


「……私、彼氏できたんだ」


「へ、」と言って春ちゃんの目が点になった。あ、要がお箸落とした。悠太くんはいつもと同じ顔で少し目を見開いた。両隣の2人はぴくりとも動かない。千鶴は私の方を見てるけど、祐希くんは違う方向をじっと見つめている。


「だからお昼とか放課後とか、あんまり一緒に居られなくなるかも」


そう言うと、祐希くんが一瞬だけ私を見た気がした。



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