その手をずっと | ナノ
卒業までは友達
「まぁまぁ元気出しなさいな千鶴」
「女のなっちゃんに俺の気持ちがわかるもんか…」
「あーうん…そうだね…」
千鶴って拗ねたらめんどくさいなぁもう…
「なっちゃん、顔に出すぎだよ」
千鶴に自販機にジュースを買いに行こうと言われて、いつもならめんどくさいから断るんだけど、私がチョコを用意してないせいで(ほんとはあるけど)こうなってしまったから仕方なく付き合うことにした。
「あ、春ちゃんとゆうたんだ。…あっ、あとメリー、も」
「ほんとだー。…なに動揺してんの?」
「しっしてないよ!!」
「あの、名前ちゃん…」
名前を呼ばれて振り返ると、去年同じクラスだった女の子がいた。千鶴は気を遣って春ちゃんたちのところへ行ってしまった。それにしても千鶴ってば、茉咲ちゃんと何かあったのかな。
「どうしたの?」
「お願いがあるんだけど…」
そう言って、可愛らしくラッピングされた四角い箱を差し出される。
「やったー、私に?」
「ちっ、違うよ!あの、その…祐希くん、に。作ってきたんだけど…」
顔が赤い。あれ、もしかしてこの子祐希くんのことが好きなの?
「名前ちゃんから、渡してほしくて」
「いいの?自分で渡さなくて」
「名前ちゃん、祐希くんと仲良いし、名前ちゃんからなら絶対に受け取ってもらえると思うの。だから…」
「祐希くんお菓子なら何でも食べるから普通にもらってくれると思うけど…」
「お願い!直接渡す勇気なくて…」
「…わかった、渡しとくよ。クラスとか名前言っておこうか?」
「ううんっ、言わなくて大丈夫。ありがとう!」
じゃあよろしくね、と念を押して包みを渡された。自分でラッピングしたみたいだけど、可愛くきれいにできてる。女の子だなぁ…。頬を染めて恥ずかしそうにする姿とか、ほんとに可愛らしい。
とりあえず話もすんだし千鶴と合流しよう。少し離れたところに悠太くんと茉咲ちゃんがいたから近付いた。悠太くんは茉咲ちゃんの正面にしゃがみこんで彼女を見上げている。何話してるんだろう。
「おーい悠太く「好きだよ」
「……………」
「あ、名字さん。どうしたの?」
「いや、別に……」
知らなかった。悠太くんが茉咲ちゃんのことが好きだったなんて…!それに茉咲ちゃんも心なしか嬉しそうだし!
悠太くん、高橋さんのことはもういいの?それより悠太くんってロリコンだったの!?だから高橋さんとは別れたの!?
「…………悠太くんがどんな趣味してても、卒業までは友達だよ!」
「それって卒業したら他人だよね?ていうか、絶対何か変なこと考えてるよね」
「いや、全然。」
春ちゃん、茉咲ちゃん、悠太くんで三角関係かぁ…。なんだかとても複雑な気分です。
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