その手をずっと | ナノ
飴玉一つと引き換えに
今年のクリスマスは勿論、イヴも彼氏と会う予定なんかはなく、ていうかそもそも彼氏自体いない私には辛い時期がやって来た。
イヴの今日は香織に誘われて、クラスの彼氏なしの女子数人でパーティーをすることになっている。香織の家に行くために商店街を歩いていると、見慣れた5人組がサンタの格好をしていた。じっと見ていると祐希くんが私に気付いてこっちに近付いてきた。
「………祐希くん何やってんの」
「まぁかくかくしかじかで」
「わかんないよ」
とりあえずおもしろいのでサンタの格好の祐希くんを携帯で撮った。ピースしてくれて、意外とノリがいいみたい。
「あ、名字さんクリスマスプレゼントちょうだい」
そう言って祐希くんは両手の掌を上に向けて差し出してくる。
「サンタのくせにクリスマスプレゼントなんかねだんないの」
「だってこの前飴あげたじゃん」
あんな飴玉1つでクリスマスプレゼント要求するのかこの人は。
「じゃあ、今度は違う飴あげるよ」
「えー、どうせなら映画とか奢ってほしいなー」
「飴と映画なんて全然釣り合いが……あ、でも映画といえばあれ観たいかも。あの探偵もののドラマの劇場版」
「あれもう公開してるっけ」
「確か先週からだよ」
「うわ、出遅れたー…」
わかりやすく祐希くんが落ち込んだ。確かあのドラマは祐希くんも好きだったなぁ。テレビでやってた頃、放送の次の日は絶対その話してたし。
「じゃあさ、明日一緒に見に行かない?」
「…明日?」
「?、うん」
明日じゃ都合悪かったかな。一瞬祐希くんが戸惑っている気がした。
「……いいよ。行こ」
「じゃあ千鶴たちにも、」
「いや、…2人、で」
「2人?」
こくりと祐希くんが頷く。まぁ、千鶴と一緒じゃうるさくて集中できないもんね。この前DVD見たときもさっきのどういう意味ー?って何回も要に聞いてたし。
「……嫌ですか」
「そんなことないよ。あ、じゃあ私急ぐからまたメールするね」
祐希くんに手を振って別れた。携帯を見ると、香織から先にパーティー始めるよ!とメールがきていて気が付いた。
…明日クリスマス当日じゃん。
だから祐希くん気まずそうにしてたんだ。
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