その手をずっと | ナノ
お化け役になりきれず



「トイレの花子さんイン文化祭!」

「千鶴、花子さん似合うねー!」

「俺だから何でも似合っちゃうんだよなーこれが。……なっちゃん?なにそのカッコ…」

「見てわかんない?」

「そろそろ始まるから準備しろよー」

「要……ぶはっ!なにそれウケるー!」


要は白い着物を着て黒髪の長髪のウィッグをかぶっていた。それに口から血まで垂らしている。ぶっ、やっぱりウケるわ…!でもわりと長髪似合ってんじゃん。


「名字さん、その格好って…」

「あ、祐希く……うわー!いいよ、すごく似合ってる!ピッタリだねー!」

「どうも……」


髪型も合ってるしいいよ!誰が決めたのか知らないけどナイスな人選だね。頭にお父さんがいれば完璧なのになー。


「ちなみに私はどこからどう見てもねこ娘です」

「どこからどう見てもって…ねこ娘の髪はショートでしょ」

「ポニーテールもいいでしょー」


白いブラウスに赤い膝丈のワンピースを着て、赤い靴もはいた。髪はポニーテールにしてピンクのリボンを付けている。さらに、猫っぽく見せるために化粧で目尻をあげた。これは香織を始め、クラスの女の子たちがノリノリでやってくれたものだ。


「お前その格好でどうやって脅かすんだよ」

「喧嘩のときの猫の鳴き声を流すの。暗いところで流せば迫力あると思うよ」

「じゃあお前の格好いらねぇじゃん」

「それだけは言わないで…薄々気付いてたから…」

「そんなこと言っちゃって、要っちってばなっちゃんの格好すきなんじゃないの〜?」

「そうなの?今ならワンショット500円だよー!お得お得!」

「500円貰えたとしても撮らねぇよ。ホラ、そろそろ客来るぞ」


2、3人やって来たみたいだ。慌ててお墓の後ろに隠れる。猫の鳴き声を録音したラジカセもちゃんと持ってるし完璧だ。それにしてもこのラジカセ重いな。もっと軽量なのは学校にないものか…。


「あ、悠太だ」

「春ちゃんもいる!では先陣名字、参ります!」


ラジカセのボタンをポチリと押した。


『にゃあ〜ん』

「わー、悠太くん聞こえました?かわいい猫さんの声!」

「聞こえたよ。お化け屋敷にはものすごい不釣り合いなかわいらしい声がね…」



「あ、あれ…?」

「お前は何をやってんだよ!」


バシン!と要が私の頭を叩く。せっかくのポニーテールが崩れるぅ!


「間違えた!これ私が宣伝用のかわいい鳴き声だ!こんなの癒すだけだよ!脅かさなきゃなんないのに…!」

「よし、いいこと思いついた。俺に任せて」


祐希くんはちゃんちゃんこを脱ぐと悠太くんたちを脅かしに行った。見事な叫び声が聞こえる。まぁ、叫び声は春ちゃんのだけだけど。次に千鶴、そして要も続いた。最後にもう一度私が飛び出して…!


「わーーーっ!」


よし、ここで猫の鳴き声を…!


『にゃあ〜ん』

「わ、名前ちゃんかわいいですね」


あ、また間違えちゃった…。


「名字さん今わーって言ったよね。それじゃ猫じゃなくてただの名字さんだよね」

「悠太くん、いつもは私の失敗をフォローしてくれるのに今日は厳しい…」


ああ、またやってしまった…。


「じゃーみなさん行きますか」

「待てよ祐希!まだ俺らの時間おわってねーだろうが」

「あと5分もないでしょ?いーじゃんちょっとくらい」

「じゃーねー要」

「コラ名字!!!」


叫ぶ要を無視して要以外の私たち5人は出口に向かって歩き出した。



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