その手をずっと | ナノ
みんなで夏祭り



夏休みに入ったある日、千鶴からメールで『今日みんなで祭り行こーよ!』ってお誘いがきたので、浴衣を着て髪はお団子にして待ち合わせ場所に来た。たぶんここに全員集合するはず。せっかくの夏休みだし、楽しまないと。

…今気が付いた。“みんな”って男5人だよね。みんな私服で来るだろうし、私1人浴衣着てたら浮くんじゃ…!しまったー私服着てくるんだった。

今からでも帰って着替えようかと考えていたら肩をポンポンと軽く叩かれた。千鶴かな?


「千鶴…?」

「おねーさん1人?」

「よかったら一緒に祭り行こうよ〜」


なんだかチャラそうな2人組が話しかけてきた。てか誰が祭りに1人で行くのよ。待ち合わせしてるに決まってるじゃんバカじゃないの。

心の中でかなりひどい扱いをしながらも、とりあえずは穏便に済ませようと精一杯笑顔を浮かべた。


「待ち合わせしてるんでー…」

「誰と?何人?」

「友達です。あと5人来ます」

「えっ5人も!?よかったらその子らも一緒にどう?」


5人と聞いた途端、急に嬉しそうな顔をした。…喜んでるところ申し訳ないんですが、5人とも男です。1人だけ女の子っぽいけど、れっきとした男ですよ…。


「6人でまわろうって前から約束してたんでー…」

「いいじゃんいいじゃん!俺ら盛り上げるし!」


あああうるさい!

盛り上げるって単に声が大きくてうるさいだけでしょどうせ!


「うるさい」


思ったより低い声が出てしまった。でも我慢ならないのでかまわず続ける。目の前のお兄さんたちは目をぱちくりさせていた。


「この女!声かけられたからって調子に乗りやがって!」

「どっちかっていうと調子に乗ってんのはそっちですよね?あんたたちみたいなのにホイホイ着いてく女がいるとでも?」

「なんだと!?ったくとんだハズレだな。行こうぜ」


ハズレだとぉ!?それはこっちのセリフだバーーーカ!

1人は舌打ちをして、もう1人は大きくため息をついてどこかへ行ってしまった。静かにはなったけど、私の怒りは収まらん!


「あらあらハズレなんだ。かわいそうに」

「……げ。祐希くん」

「まぁこの見た目であんなドスのきいた声出せるとは誰も思わないしね。確かにハズレかも」

「悠太くんまで……」


お恥ずかしい。2人に一部始終を見られてたみたいだ。ていうか見てたなら助けてよ!


「怒りたくなるのもわかるけど、相手は2人なんだから気を付けなきゃダメだよ。女の子なんだから」

「やっぱり悠太くん優しい…!あーあ、悠太くんみたいな人がナンパしてくれればついてくのにー」

「尻軽発言はやめてください。それに悠太はあげないよ」

「尻軽だなんてひどい…!しかも相変わらずのブラコンっぷりだこと」


祐希くんに尻軽扱いをされていると、ニコニコ笑ってご機嫌な千鶴の声が聞こえてきた。


「ゆっきーたち早いねー!」

「千鶴!春ちゃんに…あ、要もか」

「最後あからさまに嫌そうな顔すんな」


全員集合したところで、とりあえず屋台で何か買うことになった。まずは焼きそばでも食べようかな。


「そういえば今日なっちゃん浴衣じゃん。似合ってるねー!」

「ほんとですね。かわいいです!」

「えへへ、ありがとう…」

「何照れてんだよ気持ち悪ぃ」

「要ひどい!バーカ!メガネ!バーカ!」

「要っちこそ、照れてないでなっちゃんの浴衣姿を褒めないと!」

「そうですよ、要くん!」

「今名字さんの機嫌悪いし、嘘でもいいから適当に褒めといた方が身のためだよ」

「…祐希くん、その名字さん真横にいるんですが」


祐希くんってたまに心にグサッとくること言うよね…慣れてきたから別にいいんだけど。

それより焼きそばだ!一応青のり抜きにしてもらおう。せっかく浴衣で来たのに、歯に青のり付けてたら台無しだもんね。


「焼きそば1つ青のり抜きでくださーい」

「…お前、さっきの」

「………あ」


誰が横にいるのかと思えば、さっきしつこく絡んできた、ただうるさいだけの2人組だった。


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