その手をずっと | ナノ
お兄さんと弟くんと
「おにーさん」
「え?」
お兄さんとは悠太くんのこと。もちろん私のお兄さんではないけど。祐希くんの面倒を見てる姿が本当にお兄さんらしかったので冗談で呼んでみたら、戸惑いながらも振り向いてくれた。
「それじゃまるで俺と名字さんが結婚して夫婦にでもなったみたいじゃん。やめてよね」
不服そうな顔で悪寒がする。と続けたのは祐希くん。そしてしばかれた。痛い。それに悪寒がするとか言いながらなんでかちょっぴり顔赤いよ君。
「ほんと文句ばっかだよね弟くんは」
「ちょっと、それだと名字さんと悠太が結婚したみたいじゃん。嫌だよ、名字さんに悠太はあげないよ」
「例え結婚したとしても弟くんだなんて呼んでやらないし。ていうか早く兄離れでもすればどうなの」
はぁ、とため息をつけば隣に悠太くんが近付いてきた。
「そろそろ帰ろっか」
「そうだよ!せっかく早く学校終わったのに、教室でだらだら話してるうちに結局いつもと同じ時間じゃん」
要は確か今日生徒会の集まりがあるってお昼に言ってたようなそうでなかったような。千鶴が騒がしかったから聞こえなかったんだよね。
「そういえば悠太くん、春ちゃんは?」
「今日は用事あるからって先に帰ったよ」
「じゃあ祐希くん、千鶴は?」
「春と一緒に帰ったよ」
「ちょっと、何のために教室でたむろってたのよー、私たち」
「たむろするのはヤンキーの基本でしたよね」
「誰がヤンキーだ!」
私をヤンキー呼ばわりする祐希くんを睨むと、祐希くんにあらこわい、と言われた。全然怖がってないじゃん。
「俺も名字さんはヤンキーかと思ってた」
「悠太くんまで!」
「名字さん、スカート短いしリボン付けてないし髪巻いてるし化粧してるし顔こわいし」
「…祐希くん?」
「人は見た目で判断しちゃいけないって言うけど、これは仕方ないよね」
「いや、1年のときはちょっとあれだったかもしれないけどさ、今は化粧も薄いし、ヤンキーとかじゃ決して」
「2年で祐希が同じクラスになったって聞いて、実はお兄ちゃんすごく不安だったんだよね。祐希がいじめられないか不安で夜も眠れなかったよ」
「いくらなんでも自分より背が高い男をいじめたりするような女ではありません!」
「じゃあ千鶴はいじめるの?」
「いやいじめないよ!てか一応千鶴のが背高いし」
「「え、そうなの」」
「そこでハモらなくても。てか早く帰ろ!」
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