その手をずっと | ナノ
みんなの呼び方
最近、お昼は浅羽くんたちに混ぜてもらうことが多くなった。クラスの女子から反感を買うかと思ってたけど、そんなことは全然なくて、むしろ大賛成された。代わりに、浅羽兄弟の情報を教えることを約束させられたけど。なんで私がこんなことを…
それはそうと、みんなの呼び方がだんだん定着してきた。橘くんは基本千鶴で、ちーさんとかちーさまとか、その場のノリでたまに変わる。
松岡くんは春ちゃん。千鶴がそう呼んでたのがピッタリだったので、あたしも真似してそう呼んでる。
塚原くんは要。こいつだけはさんとかくんを付けるのが何となく嫌だったので、有無を言わさず呼び捨て。たまに千鶴と一緒に要っち〜とか言ったりするけど。言うたびにちょっと鳥肌。
浅羽お兄さんは悠太くん。以前ノリでお兄さんと呼んだら弟にしばかれたので、もう呼ばないことにした。しかも結構痛かったし。このブラコンが!
で、浅羽くんは祐希くん。前に弟くんって呼んだら、悠太と名字さんが結婚してるみたいだからやめてって怒られた。ほんとブラコンだな。
浅羽兄弟を呼び捨てにしないのは、あとでいろいろと面倒なことになったら嫌だからね。うん、我ながらナイスアイデア!
「やっとなっちゃん、俺のこと名前で呼んでくれた!」
4組の教室にて。私たちの席に要がやって来て、いつもどおりだらだらと談笑している。
「(なっちゃん…)たちばなくん、って長いからね。千鶴だと半分だし」
「名字さん。なんで要は呼び捨てなのに俺は祐希くんなんですか」
不満そうにむぅ、と膨れる。ちらりと見てた女の子が見て、祐希くんかわいい!と言ってきゃっきゃと騒いでた。…どこが。こいつ女々しい上にブラコンだよ。
「君を呼び捨てにすると後に面倒なことになりそうだからです。要を呼び捨てにしてるのは、そうしたところで誰も羨ましがらないし嫉妬もされないだろうから」
「おい名字」
「そんな怒んないでよ要ぇ〜代わりに名字って呼んでいいからぁ〜」
「っはぁ!?やだよ!!」
「なに取り乱してんの要」
「そうだよ!ゆっきーも要っちも、なっちゃんのこと名前で呼べばいいのに」
と千鶴が言った途端、2人とも黙り込んでしまった。なによ、そんなに嫌なのか!
名前ちょっと来てー、と香織に呼ばれたので私は自分の席を立った。
* * *
「…小ザル、お前はいいよな、考えなしで行動できて。さすがサルだ、動物だ」
「本能のままに行動できる千鶴が羨ましいよ。女の子の名前を呼び捨てにするなんて、いくら名字さんでも気を遣うっていうのに」
「あ…そういうもん?」
「「そうだよ」」
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