その手をずっと | ナノ
騒がしい昼休み
屋上の扉を開くと、塚原くんがすでにいて、地べたに座っていた。他には誰もいなくて、私たちの貸切状態。これはいい穴場を紹介してもらえました。
「お、名字」
「どーも塚原くん。今日はおじゃまします」
「お前祐希と仲良くなったんだな。授業中声きこえてたぞ」
「うん。すかしてるのかと思ってたけど浅羽くん結構おもしろいのね」
「すかしてる…」
「あぁ気にすんな祐希、こいつはこういうやつだから」
塚原くんは去年同じクラスで仲良くなった。あ、別に仲良しじゃないけど、全然!
「さっき祐希の教室に行ったら、俺名字さんに祐希だと思われちゃったんだよね」
「あの、お兄さん…恥ずかしいんでその話はもう…塚原くんにバカにされることだけは避けたいんで」
「実際バカだろうが。まあ悠太と祐希の見分けをつけるのは難しいよな。しょうがねーよ」
「うわ、塚原くんが優しい。今日傘持ってきてないのにどうしよう」
「雨なんか降らねーよ名字コラ」
「名字さん、傘なんかじゃ槍は防げないよ」
「んなもん降るか!!」
相変わらず塚原くんは騒がしい。去年私は塚原くんをこんな風に扱ってたけど、浅羽くんたちもこんな感じなんだ。
「名字さんは俺と悠太を間違えたんじゃなくて、悠太の存在からして知らなかったんだよ」
「は?お前ほんっとバカじゃねーの」
「だから悠太の名前を聞くたびに祐希なのに、って心の中で他人を嘲笑ってたんだって。性格歪んでるよねー」
「いや、私そこまではしてないよ。歪んでるのは浅羽くんの方ですよね」
「あ、松岡さんだ」
お兄さんが棒読みそう言ったので振り向くと、松岡さ…松岡くんがいた。橘くんは「もう!ゆうたんまで!」と怒っている。よく見るとズボンはいてるし、男の子だったのか。
それにしても松岡くん、わたしより相当可愛らしくありませんか。私よりも女の子っぽくありませんか。
「みなさんお待たせしました〜」
「もう祐希と要は先に食べてるけどね」
浅羽お兄さんによると、橘くんは松岡くんのことを本気で女だと思っていたらしい。まぁ、わからなくもないよ。だって女の子並みにかわいらしいし。
「あ、初めまして。松岡春です」
「名字名前です…よろしく」
「名字さんは俺と千鶴と同じクラスなんだよ。あとついでに要も」
「俺はついでかよ」
「へぇ〜そうなんですか。僕は悠太くんと同じクラスなんですよ」
じゃあ食べましょうか。と松岡くんの一言で、お弁当を開いた。みんな個性があっておもしろくて、初めてのメンバーだったけど、不思議と自然体でいられた。
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