◎1
12月。
この時期になると、ふとした瞬間に腐れ縁のことを思い出すことがある。
顔はよかったが、性格はお世辞にも良いとは言えなかった、やたら私以外の女子にモテた男子。
あと、人間やめているレベルで運動神経がよかった。
そんな彼と初めて出会ったのは小学三年生の12月。
私が隣で書き初めの練習をしていた彼に、
「…お前の名前、小筆で書くの大変だな。お手本、書いてくれた先生に土下座して来いよ」
と言ったのがきっかけだった。
「…は?」
「いや待てよ…そもそも普段のテストでも、みんなが解き始めてるのにお前だけ名前書いてそう」
「…。ふーっ。俺は悪くないよな?」
普段、つまらなそうな顔をして、すかした態度をとっていたのがデフォルトだったから、心底呆れた顔をしてきたのが面白かったのだ。
思わず、続けて本音を言うとゴツンと一発拳骨をもらった。
か、可憐な女の子に手を挙げるとは…なんてやつ。
「おい、普通に痛いぞコラ。慣れてても痛いもんは痛いんだぞ」
「ちんちくりんに痛覚なんてあったのか。初めて知ったぜ…っていってぇな!人の足の指をぐりぐりすんじゃねえよ!」
イケメンがイケメンであることを自覚し、イケメンだけが許されるポーズ(腕を体の前で交差し自分を抱きしめるアレ)をしていたので、多分当時の私はムカッとしたのだろう。きっと後悔はない。
そこからは授業ガン無視のガチンコバトルに突入したので二人仲良く反省文を書かされたっけ。
懐かしいわ。どちらも体育館を墨汁で汚してすみませんでしたとしか書けなかった。
あの時のことを我が物顔で私の部屋に居座った彼から、「割と殺す気で殴ったのに、机に小指をぶつけたテンションでケロッとしていたから、ドン引きしたんだー」とカミングアウトされてチベスナ顔になった。
おい、軽率に人を殺そうとすな。ここは日本のヨハネスブルグじゃねえんだぞ。
そう言うと、奴は私が私のために買っておいたハーゲンダッツを我が物顔で食べて「人の金で食うアイスはうめーや」とぬかしやがったので、キンキンに冷えた氷を服の中に入れてやった。ざまあみろ。
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