寝起きドッキリ


あの後、なぜダンブルドアの天井裏に僕達がいたのかをじっくり説明させられた。

とりあえず、今は何も考えられない。眠すぎる。

僕らはお休みもいわず、無言でベッドに入った。


・・目を覚ますと、なぜか愛支が真顔で僕を見下ろしていた。

まじこわい。何考えてんの、こいつ。

「・・なんでここにいるの?」

「寝起きドッキリです」

「タチが悪いよ!!」

「そんな血圧あげて怒らないでください。まだ、ふたりは寝ているんですから」

「じゃあそんなことしないでください」

「・・もしかして、見られたくないものでもあるとか?まさか、ベッドの下に隠していたり?ああ、大丈夫です。そんなところを見るほど、おちぶれてはいませんよ・・・・あ、あとさっきそこで下着拾ったんですけど、あなたのです?」

どこからツッコめばいいのか分からないけれど・・とりあえず君、女の子だろ。


「へえ、シリウスの下着なんですか。彼のファンの子に売ったら、どれくらい儲かると思います?」

「君、エグいと思っていたけど、想像以上だよ」

しかし、なんというか、彼女があまりにもいつもどおりなので、少し拍子抜けしてしまう。

てっきり、口止めしてくるかと思ったのに。

思わず、それとなく尋ねてみると、彼女はどうでもいいというように答えた。

「・・ああ、別に隠していたわけではないですし」

「え・・だって、君、今まで鬼であることを隠してたじゃない」

「ああ・・私、目立つの嫌いなんですよね」

「だったら、金棒引きずりながら授業にいくのやめたら?」

「だって、鬼ですよ。鬼といったら金棒でしょう」

「・・まあ、そうだけど」


でも、今思えば確かに愛支は無駄に怪力だったし、魔法使う姿より金棒振り回す姿の方がよく見かけていた。

・・はっきりいって、人間をやめつつあるぶっ飛んだ人間というより、人外(鬼)です、と言われた方が妙にしっくりくる。


「どうりで、鬼らしいエグい発想をすると思った」

「心外ですね。私のことを人の感情が理解できないサイコパスみたいな言い方をして」

「そこまで言ってないよ!」

「言いましたよ。私のガラスのハートが傷つきました」

「クリスタルの間違いだろ」

「でも、私だって元は人の子だったんですよ」

あまりにも世間話をするように自然というから、僕も少し反応に困ってしまう。

「・・君、元は人間だったのかい」

「ええ。鬼火を体内に取り込んで鬼になりました」

少し角を気にしながら話す彼女はいつも通りだ。

それが逆に、少し不気味だ。

・・それに、今の言い方だと、彼女は・・

ぞわっと鳥肌が立って、少し身震いした。


「・・長い間雨が降らず、村の作物が全く育たなかったので、私が生け贄として選ばれたのです」

「・・生け贄?」

「ええ。あの当時は、生け贄を出すことが人の心を休める方法・・・・よくあることでした」

「・・そんな!そんなことをしたって、雨が降るわけじゃないじゃないか!!」

「それでもどうすることができないから、人々は藁にもすがる気持ちで神に祈るのです」

他人事に話す彼女は酷く冷静だった。

いや、そうやって何度も自分に言い聞かせていたんだろうな。

「別に私は生贄にされたこと自体は時代も時代ですから、仕方のないことだと理解していました。けれど、彼らが私を余所者、孤児という点で排除対象にしたことが不愉快だったのです」

「愛支・・」

「その思いが鬼火を引き寄せたのでしょう。そうして集まってきた鬼火を吸収して、今の私が生まれました」

「・・・なんでその話を僕に?」

ずっと不思議だった。

僕と愛支は一対一であまり話をしたことがなかったし。

そんな辛い話をわざわざ話さなくても、口止めをするだけで済んだはずなのに。

「ああ。あなたが1番、早起きだったからです」

「・・は?」

「いや特に理由はないんですけど、全員が起きるまでわざわざ待つのは面倒でしたから。ふたりに聞かれたら、あなたから話しておいてください」

「え、いや、これ、そう話していいものじゃないだろう。普通なら禁忌レベルで触れちゃいけない過去だと思うんだけど!!」

「どうぞ。遠慮なく触れてくれて構いませんよ」

「なんなんだその軽さは!逆に怖いな!」


僕はますます愛支という人間・・いや、鬼がわからなくなった。

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