1


何の説明もなく、結論だけを言ったアーネストが悪いのだが、全く話が読めていないアレルに対してアーネストはどこか申し訳なさそうに、けれど最早開き直ってるようにも見えるような口ぶりでここに至るまでの経緯を語る。

どうやらそのパーティーとやらに出席することになってしまっていたアーネストはどうにか理由を付けて欠席するつもりであった。思いついた限りの嘘の理由を母親に伝えた所、恐らく母親側は嘘であることに気付いていたようで、計算上アーネスト自らが参加せざるを得ない状況に落ちるように会話を続けたのだと言う。



「 そこで煽られてしまいましてですね…」
「煽られた事と僕に言った事が全くもって結びつきませんが?」
「いやだって!お前ら2人と俺同期だけど!俺そこまで大した地位にいないし!その所為もあって何かと比べられるような事言われるんだよ!?」
「いやそんな事言われても試験通ってるわけだし…。と言うか、小隊長でも充分な地位だと思うよ?」
「同期に聖騎士が居たら小隊長なんて…….、ってそうじゃなくて!」


ここからが重要なんだよ、と声を大にして言う。その気迫に若干押され気味のアレルと相変わらず話を聞きながら小さく笑っているクレスだった。多分おそらく、クレスはアーネストの事情を知っているらしい。


「それでその、パーティーとやらにお前も出ろよ、と言われたわけで」
「うん」
「もちろんさっき言った通り仕事があると何かと付けて断ったんだけど、そしたら…"あんた仕事仕事でろくに彼女も作れないんじゃないの〜?いい歳なのにまだ彼女もいないし逃げてばっかりで全く…"って…」
「………」



たったその一言でアレルは何かを悟ったらしく、表情が引きつっていた。そこまできたらなんとなく、要件を細かく伝えずにただ一言だけ結論を伝えたのも分かるような気がした。


「さすがにそこまで言われたら腹が立って!」
「彼女ぐらい居るって言ったわけですか」
「ご名答!」
「それで、お母さんにちゃっかり乗せられて、彼女連れていくって言っちゃったわけですね」
「またまたご名答!」


はぁ、と大きなため息を吐いてソファーの背もたれに寄りかかる。今思えばその交渉のためにわざわざちょっとお高めのお菓子を買ってテーブルに並べてあったんだと気付く。綺麗にトレイの上に並んだ一口サイズのケーキやらクッキーやらは交渉の為の手段だった訳だ。もう一度溜息を吐いてから腕と足を組むと視線をクレスに向ける。


「その交渉を手伝ってくれ、って頼まれたところ?」
「んー、まぁそんな感じ。"それ"に乗せられて応じた訳ではないから安心しろ」

ただ純粋にどんな結果になるのか見たかっただけ、と、つけ足すように小声で呟くと窓辺から離れてソファーの肘掛に寄りかかった。テーブルの上のクッキーに手を伸ばして口に運ぶ。さすが高いだけあるなぁ、と関心するような味である。
そんなクレスを他所に自分の名誉が掛かっている一大事に対しての返事が中々返ってこない事に焦りを感じたのか、アーネストは改めて最終的な結論を告げる。



「ーーーーと、言うわけで!彼女(役)になってください!」
「嫌です」
「なんで!!」


間髪入れずして返ってきたひとつ返事が腑に落ちなかったのか、若干食い気味にアーネストも返す。本日三度目の深い溜息を吐いた。


「普通に考えて嫌でしょ、見栄張った自分が悪い」
「そんな事言わないでください〜!同期でしょ!」
「さっきボロクソ言われましたが?」
「それは言葉のアヤと言うか…、とりあえず!俺の名誉が掛かっておりまして…!」
「………、 まず僕と君とじゃそんなに身長差ないけど」





[ 6/8 ]

[*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -