prologue


例の双子の一悶着から数日。"アリス"と言う存在の現実と余りにも残酷な結末を知った真琴は元気が無い、と言うか元々さほど活発なタイプではないもののどこか不安を抱えているような、そん感じであった。
とは言え時間は過ぎて行くものでどうにか励ます事が出来ないかとリノが真琴を連れて街中を散策している最中城のとある1室ではまた少し変わった重苦しいような空気が漂っていた。

各々に与えられた部屋よりかは確実に広いその部屋は客室やミーティングなどに利用される事が多く、ある程度の物は完備されていた。部屋の真ん中に置かれたソファーに腰を掛けて静かにコーヒーを飲むアレルと、テーブルを挟んで反対側の1人がけソファーに腰を掛けるアーネストの間には何か言葉にし難い空気が漂っており、そこから少し離れた窓際に寄りかかるようにして腕を組むクレスの姿があった。

特に何か音がしているわけでも無く、寧ろ静かすぎる空間で何か言いたげに、アーネストはそわそわと視線を動かす。音を立てる事すら許されないような空気に打ち勝つべくアーネストが口を開いた。


「えーっと、あのですね、お仕事中にお呼び出しさせて頂いたのはですね…」
「うん」
「今度俺の実家でその、パーティーと言うか…」


アーネストの実家はこの辺りでも有名な領主な家系で王都から離れた街ではあるものの大きな街1つを恐ろしく老廃していた状態から立ち直らせ、今では他国との貿易を担う国としても重要な大きな港街として栄えてさせたのである。実家がそれ程有名な家であると言うのにその家の長男であるアーネストがなぜ騎士団に居るのかはさておき、アーネストの実家では2週間後に両親が主催の親族パーティーがあるのだと言った。親族と言っても集まるのは親族を中心とした面々と普通に街の人達の参加もある。言わば街総出のパーティーと言った所だろうか。


「それに対して僕を呼び出したのは?」
「えーっと、ですね、その…」

目線をあえて合わせないようにするアーネストの前には至って真面目な、真剣過ぎて恐怖すら覚えるような表情を浮かべるアレルの姿がある。 再び僅かな沈黙が訪れたあと、テーブルに両手を着き、頭を下げて叫んだ。


「俺の彼女になってください!」




「……は?」



3秒ぐらいの空白の後に本気で理解出来ていない、すっ飛んだ声を出すアレルと、その声から大した時間もなく窓際の方から耐えきれずに吹き出して小さな声を出して笑うクレスの姿があった。



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