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アレルが178cmに対してアーネストは180cm、クレスも同じく180cmで今ここにいる3人の身長は団栗の背比べ状態だった。ましてや「彼女」とするのであれば少なからず多少の身長差があった方が見た目もいいだろう。割とごもっともな事を突かれてしまったアーネストだが全くもって思い悩む様子も諦める様子も見せずにぐっ、と 親指を立てて笑う。


「大丈夫!問題ない!ちょっと背が高いぐらい女子だな〜、ぐらいで通る!」
「なんでそんなポジティブなの!?」


2人が討論を続けている隣で傍観していたクレスだが最後に一枚を口に運んだ所で親指に着いた粉をぺろり、と舐めてようやく口を開く。


「まぁいいんじゃん?やっても、どうせ今回が初めてじゃない・・・・・・・んだし?」
「ーーーーーえ?」
「ちょっ…!!?」


思いもよらなかった発言だったのか豆鉄砲を食らったような鳩のように呆然と、目をぱちくりさせるアーネストと顔を赤くさせながら、何言ってんだよ、と言わんばかりの表情を浮かべるアレルの姿があった。そんな2人の表情にクレスは微動だにせず面白いものを見ているかのような、いたずらめいた笑みを浮かべる。


「え?え?なに、初めてじゃない…の?」
「…………」
「1回目はある意味エルネットのせいで、2回目は自業自得?3回目は………な?」
「〜〜〜〜〜っ、もう黙って!」


夫婦喧嘩かよ、と静かに心の中でツッコミを入れるアーネストだがこれ以上いつどのタイミングで"それ"をしたのかに関しては触れないことにしておこうと決めたのだった。恥ずかしさに顔が熱くなっているような気がしたけれど仕切り直すようにアレルが咳払いをする。


「と言うか、エルネットに頼めばいいんじゃ…?エルネットなら多少身長差出るだろうし普段から"あれ"だから…」
「ーーーーエルネットかー、実はな…」


この話をするちょっと前。僅かな希望を持ってエルネットの元へとアーネストは向かった。相変わらず女の人みたいにいい意味で綺麗に着飾ってるなぁ、と久々に対面して思ったアーネストだが、普段から女装をしているエルネットとはいえさすがに頼んだらなにか一言二言ぐらいお小言が零れるだろうと予想し、お詫び程度に買ったお菓子の入った紙袋を渡す。
"あら、急にどうしたの〜?"とエルネットは紙袋を受け取って嬉しそうに顔を綻ばせながら問いかけるとアーネストは"実は…"と言葉を続ける。


「ふーん、なるほどねぇ…お母さんの策略に乗ってしまったと……」
「失礼承知でお願い出来ないかな〜、と…」


自らの顎先に指先を伝わせながら暫く悩むような素振りを見せると、ぐっと親指を立ててウインクを飛ばした。


「『ーーー任せなさい!あたしがあの子に似合うドレスを作って見せる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・から!』って…」
「………は??」
「お名前も念のため聞いたら、まぁ、エルネットからもご指名で…」


断れば多分、いや確実にアーネストよりエルネットからの盛大な嫌がらせが来るのはもはや確定したとも言える。理由はあっても断る術も逃げ道も全て絶たれたも同然の状態に陥ってしまったアレルは頭を抱えて項垂れる。



「ーーーこの件について絶対忘れないからね」
「はい、すいません、お願いします」






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