prologue


アメディウスには幾つもの都市がある。リードルフは王都を目の前に置く、国の中でも唯一の最大都市だ。そこに住むのは大体が貴族と言った金持ちが多く、他の都市から来る者を快く受け入れない者も少なくはない。
他は一般市民、金持ちでもないが貧相でもない、最低限の生活を営むことができる人が多く住む。


だが森よりも先にある村や街。
そこに関しては話が別だった。
最低限の生活どころか、
騎士団の管理も手薄になる場所が少なからずある。
森の先にあるのは大体がそうだ。
治安が良いはずもない。自分が生きていくのが精一杯の場所。

森よりもずっと先。
森を越えて更に進んだ海沿いの小さな村。
人々が口々に同じ事を言う、その村。



「"イーリウム"って村、お前ら知ってるか?」


クレスは三人に問いかけた。真琴が知らないのは無理はない。正直、リノも知っているかも危ういぐらいだ。


「確か…ここから半日ぐらいかかる場所で…」



アレルが顎に手を掛けて呟く。
クレスはその言葉に小さく頷き、言葉を続けた。



「"最下層の村"、そう呼ばれてた村だ…魔法の概念はおろか働くって概念すらないような村。常に人が喧嘩し合ってるような場所」



どの都市に住んで居ても、全員が全員そうやって同じ事を言う。


『最下層の中の最下層』
『救い様の無い場所』
『犯罪者の巣窟』


そんな事ばかり言われてきた村、"イーリウム"。



「そこで、俺は生まれたんだ。」



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