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「クレス、さ…治癒部隊には言わなかったけど何か変だったんだ、らしくない、って言うか…」
「らしく、ない?」
「あぁ、客人として招かれたお前に言うのも変だけど看病してるなら言っておこうと思ってさ」


普段なら一人で先走って行ってしまう事は早々なかったのに、止める声も聞かずにクレスは走り出していた。
それに個人の感情が反映されていたのかまでは知る術がない。


「メーヌで一人目の遺体を見つけた時、何かと重ね合わせて見てるみたいだったんだ」


呆然とその景色を見ていた姿をマーティスだけは見ていた。
それは今までに見せた事のないクレスの姿で、深くマーティスの記憶に残っていたのだろう。


「さて、じゃあ俺も休むかな…殆ど寝てないし。クレスの事、頼んだぞ」
「はい、ありがとうございました…」


マーティスは欠伸を掻くと部屋を出て行った。



「何かと…、重ねてた…か…」


そうは言われても、何と重ねていたのかなんて真琴は知らない。
それがこの間メーヌに行った時に言っていた"自分の事"に関係しているのだろうか。

真琴も少なからずメーヌに行き、そこにいる子どもと会話をした。
それがもう出来ないのだと唐突に突き付けられた現実に、正直まだ心の整理が出来ていない。

色んな事を一日に体験した所為か、僅かながら疲れを感じていた。

小さく溜息を吐き出す。

「お水、貰って来ようかな…喉乾いた…」

水を貰いに行こうと真琴は立ち上がる。
扉に向けて一歩進もうとすると、温かい手が真琴の手首を掴む。
視線をそちらに向けるとクレスの意識が戻っており瞼がゆっくりと上がる。


「クレス…?大丈夫…?」

真琴は歩み掛けた足を戻し、ベッドの横に膝を付き名前を呼んだ。
ぼやけた視界に映った真琴を見て、小さな声で呟いた。



「………、ノエル…?」



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