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メーヌの村の中を騎士団員は見落としの無い程に調べ上げた。
だが生存者は誰一人見つかっていない。
大体の者が無残な姿で発見されて居た。

その姿を発見する度に団員達の表情は陰る。


もう陽が昇ってもいい頃合いだが、分厚い雲の所為で太陽の光は届かず、調べている最中に冷たい雨が降り出した。



「……っ、嘘だろ…」



クレスは声を押し殺してそう呟く。
打ち付ける雨が冷たい。
信じなくて良いものならば信じたく無いのに、目の前に広がる現実が全てを否定する。

まだ足を踏み入れていない場所があるのを思い出したクレスは、そこへ足を運ぼうとした最中、土に僅かに血痕が残っているのに気付いた。足で血を踏み、そのまま走り出したのだろう。その足跡は森の方へと続いていた。

僅かな希望を抱き、一目散に駆け出す。


「…!クレス!?」


マーティスが名前を呼んでも振り返らずに"終わったら雨除けしてろ"と叫んだ。



雨によって流れる泥で足跡は消えかけているが、まだ分かる。足跡を追いかけて行く。足場の悪さと雨に体力を奪われるも、そんな事を気にして居る所では無かった。
10分程走った所だろうか、そこで足跡は消える。


「この辺りか…」


辺りを見回す。草木が茂る森の中では視界が不良になるのに付け足して、次第に雨は強くなっていった。少し歩いた所である姿を見つける。


地面に横たわる小さな身体。
その近くには剥き出しになった木の根。
あの日、自分を必死に呼び、相手をすれば満面の笑みを浮かべた少年。


そしてまた、今と昔が脳裏で重なる。


思わず目を逸らし、瞑った。
嘘であれと、いくら願っても。
今目の前にいる少年も、
村で見つかった住民も、
全員、もうだめだったんだ。


その少年に近付き、開いたままの瞼をそっと下ろすと、頬を優しくなぞる。


「………、ごめんな、守って…助けてやれなくて…」


その言葉は激しく降り注ぐ雨音に掻き消されそうなぐらい、小さい。


少年の身体を抱きかかえ、村に戻ろうと腕を掛けた瞬間、そう離れて居ない所で不自然に木の枝が割れる音がする。



「……!誰だ!」



その音のした方へ叫ぶが、反応はない。
だが一瞬人の影が見えた。その影はクレスから離れて行く。


「っ、待て!」


この無残な状態へと導いた犯人かもしれない、そう思ったクレスはサーベルを引き抜きその姿を追った。




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