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マーティスに告げられた言葉を信じられないままだった。それが嘘だったなら良かったのにと必死に願う。

その言葉を聞いてから間も無くして、ヴァレンスからの出動命令が出た。

マーティスと彼が率いる騎兵団の内の一小隊、そしてクレスはそれぞれ馬に乗り、足場の悪い森を駆ける。
2時間近くと言う長い時間だったが、森に近い所為かそれとも明かりが無い所為か、まだ辺りは薄暗い。


辿り着いたのは、メーヌの村。
つい先日訪れたばかりの小さな村。

そこへ足を踏み入れるのを騎士団員全員が躊躇った。
村への入り口に立っただけで分かる"それ"に、思わず息を飲んだ。



「……行くぞ」



クレスのその声に、マーティス、それに騎士団員は気を引き締め、歩を進めた。
確かに夜が明けていないのもあるが、静か過ぎた。

薄気味悪いと感じるぐらいに。



「あっ!こっちです!」



村に入って直ぐの場所で、クレス達を待っていた一人の騎士団員が居た。軽く頭を下げてから"その場所"へと案内する。そう離れてはいない場所だった。



古びた引き戸を開ける。古びている為に僅かな隙間があった。その隙間から漏れる"それ"の臭いは引き戸を開けたと同時に大量に漏れ出した。



「………っ!!」



噎せ返るような強い血の臭い。
木で出来た壁にべったりと付いた痕跡。
無残な姿になった人。

思わず言葉を失う。
クレスだけではなく、後ろにいた全員がだ。


クレスは呆然と無残な状態を見つめる。
何時だかに見た、その光景。
今と昔が重なるような感覚。


「私が仕事の帰りに偶々寄ったのですが…、その時にはもう…既に村の者は全員…」



その一言でクレスは我に返る。



「お前らも別の場所の状態を調べろ、もしかしたら生きてる村人も居るかもしれない」

「はい!」


全員が村の中を走り出した。





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