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エルネットを追い掛けて部屋を飛び出した真琴は、気付けば中庭へと足を運んでいた。真琴を追ったリノも次いで中庭へと辿り着く。
「なぁに?真琴、それにリノまで、あたしについて来て…」
「えっと…その…」
「戻った方が良いんじゃないの?みんな居るのに」
エルネットの言葉が、僅かながらも真琴を拒絶しているように感じた。 背を向けたまま淡々と話すエルネットだが、言葉は冷たい。どこか突き放すような、棘のある声色だった。真琴は返す言葉が無く深く俯くと、リノが真琴の手を優しく握る。
「エルネットが…」
「……?」
「エルネットが、クロスビー…さんの話をしてる時…すごい…悲しそうだったから…その…」
真琴の言葉に思わず目を丸くさせた。当の本人はそんなつもりはなかったし、実際は表情は悲しそうでも何でも無かった。
辛かったのは、内側で。
それすらも見透かすと言うのだろうか。
「貴女、意外と鋭いわよね」
「え?」
「こんな感じは初めてよ、初めて、何も知らない人に話したいと思ったのは」
今まで、自分の過去を知らない者に自らの過去を告げた事は無かった。知ってるのはきっと、あの時騎士団に所属していた者と、更に詳しく知ってるのは一部しか居ない。
そんな彼が初めて、人に話したいと思ったのだ。
「エルネット…」
「リノも来なさい。貴女にも話しておきたいの…」
エルネットの声は優しい。
真琴は僅かに安堵する。
リノを手招きして呼ぶと、中庭の中央にある東屋へと足を運んだ。
大理石のような椅子に座ると、
エルネットは話し出す。
「あれは、3年前の話よーーーー」
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