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アレルが用意してくれた馬に乗って早2時間程は経っただろうか。リードルフの先の森を抜けて直ぐの小さな村。真琴自身が馬に乗り慣れて居ない為案内がてら着いて来てくれた一人の騎士と共にその村で馬を降りる。
「では、私はこれで…」
「あ、ありがとうございました…」
「帰りはクレスさんとお帰り下さいね」
「はい」
村に到着し、入口まで案内すると騎士の男性は丁寧に頭を下げて帰って行った。
真琴はリードルフのような街を想像していた所為か、今目の前にある小さな村に違和感のような何かを感じる。壊れてしまいそうな平屋建て、生い茂った手入れのされていない芝。
真琴が居た世界でも、テレビ越しでしか見たことのない風景。
それが目の前に広がっていた。
(こんな所に…クレスが…?)
真琴は僅かに不安を感じながらも村の中に足を踏み入れた。辺りを見回しながらクレスの姿を探す。
辺りを見回していたとは言え、後ろまで見ていた訳ではなく不意に何かがぶつかる。小さな呻き声が後ろからした。慌てて真琴は振り返り、尻餅をついてしまった少年に視線を合わせるようにしゃがむ。
「ごめんね、大丈夫…?」
「いてて…気を付けて歩けよ!」
真琴の不注意もあったが、ぶつかって来たのはその少年の方だ。怒られる筋合いはないのだが、真琴は再度謝罪の言葉を口にする。
「…、ごめんね、気を付けてるから…」
「今のはどう見てもお前が悪いだろ」
聞き慣れた声に顔を上げる。その少年の後ろには私服姿で数人の子供を連れたクレスが居た。
「…クレス…」
「真琴…!」
あまりにも不意打ち過ぎて一瞬時間が止まったような感覚になる。
真琴は色々と気になる事が頭に浮かぶ。
「なんで、こんな所に…?」
「あ、えっと…手紙が…」
「手紙…?」
手紙を差し出そうとすると、二人の間に小さな子供が割って入って来た。
「兄ちゃん!早く戻って遊ぼうよ!」
「兄…ちゃん?」
「あー、その、ここの村に住んでる子供なんだけど…何時だか仕事で来て以来懐かれて…」
ぐいぐいとクレスの腕を引く子供達。それに合わせて少しずつ歩を進めながら軽く説明をした。
「とりあえず、着いて来いよ。そこに居ても仕方ねえだろ」
「う、うん…」
真琴はクレスの後を追った。
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