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「真琴さん」
「…ヴァレンスさん…?」


ずっと此処において貰うのも悪いと思い始めた真琴は、現在騎士団の雑務の手伝いをするようになっていた。雑務と言っても軽い掃除だったり、料理の手伝いだったりとそこまで大変な事ではない。リノは『やらなくて大丈夫だって』と笑いながら言ったのだが、真琴のどうしてもと言う申し出から全ては始まっていた。

そんな中真琴は部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、後ろから名前を呼ぶ声が聞こえ、振り返る。


久々、と言えば久々に会った。
現筆頭騎士のヴァレンスだった。

柔らかい物腰で微笑む。


「お久しぶり、ですね?客人として招いておきながらも雑務までやって頂き、助かっています…ありがとうございます」
「いえ…、私が自分でやりたいって言った事です…ので…」


回数出会って居ない所為か、どこか気まずく真琴は感じていた。
それ以外に何かありそうな気もするのだが、良くは分からない。
ヴァレンスはジャケットのポケットから封筒を二つ出し、真琴に差し出す。


「あの…これは…?」
「手紙です。アレルとクレスに…渡して頂いても大丈夫ですか?私はこれからまた出なければいけないので…」
「……、分かりました」
「ありがとうございます、では」


ヴァレンスは頭を軽く下げてから真琴に背を向けて去って行く。
真琴は封筒二つを手にしてアレル達の部屋の方へと足を運んだ。

部屋へ向かう途中でアレルの姿を見掛けた。
アレルの隣には、見慣れない男性。
ダークブラウンのショートカット、服はアレルと同じ隊服。


「真琴?どうしたの?」


アレルは真琴がこっちを見ているのに気付き駆け寄る。
真琴は手に持っていた封筒を渡した。


「ヴァレンスさんから…」
「……?」


アレルは封筒から手紙を取り出し、軽く目を通す。一瞬僅かに表情が陰った。


「ーーーーそっか…、もうそんな時期か…」
「え?」
「あ、ごめんね、何でもないよ」


誤魔化すようにアレルは笑った。
そんなアレルの肩に腕を乗せたのはあの男性だ。


「ん?何だよ、ラブレター?」
「違う、そのうち君にも通達があると思うよ、アーネスト」
「……?」
「あ、もしかして最近客人として招かれたっつー…初めまして、だよな!俺はアーネスト、アレルと同期!」


アーネストと名乗った男性は人懐こい笑みを浮かべ真琴に挨拶をした。次いで
真琴も名前を名乗ると真琴の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「いい加減にしなって、アーネスト。……それ、もう一つのはクレスに?」
「あ、うん…クレスは…?」
「今日は非番だよ、休める時には休まないと騎士団って色々あって大変だからね‥多分行き先は変わってないと思うから、行ってみる?」
「行き先…?」
「非番の時、必ずと言って良いほど行く場所があるんだ。馬、用意するから下で待ってて」
「うん、ありがとう」


アレルはアーネストと共に廊下を駆け出した。




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