4


同時刻。
リードルフ、街外れ付近街道。真琴とクレスは、エルネットやその他住民の目撃情報を頼りにアレルとリノを探して走って居た。
口を揃えて"森の方へ向かった"と言うのだから、間違ってはいないのだろう。


走っている最中、クレスは不意に言葉を紡ぐ。


「ーーー…なぁ、お前さ、何を願って、"選者"の手を取ったんだ?」



真琴はその質問に対して、言葉を失った。
走っていた足をぴたりと止め、深く俯く。言って居なかったのは自分の責任だが、"アリス"以外の6人の運命を知った今自身の願いを告げるのは正直酷だった。クレスも足を止め、俯く真琴を覗き込む。


「真琴?」
「ーーー私は…、私の願いは…」


言いかけた所で、再び口を閉ざす。
まだ迷いが真琴の中にはあった。

だが、言わなければ。
何時か知られてしまうのなら。


「私は…死にたかったの」
「…!」
「こんな事を今言うのは不謹慎だと思うけど…、私は"選者"に死のうとしていた時に出会って、"必ず叶う"って彼は私に言ったの」
「"選者"が…?」
「うん、きっとあの時の言葉…」



ラルが蝶を失い、消えた時の事を思い出す。
あの時"選者"が真琴に対して言った言葉はーーー。



「私がこの争いの始まりになれば良かったのにって事だったんだと思う」



真琴が始まりになれば、必ず"アリス"を巡る争いは始まる。どれだけ嫌でも始まってしまった以上、周り出した歯車を止める事は出来ない。


「ーー確かに、お前は"選者"にとって始まりになってくれれば良かった存在だったかもしれない。だけど、今のお前はどうなんだ?」
「え…?」
「今のお前は、まだ、死にたいって思うのか…?」


今の自分を、考えてみた。
今もまだ"死"を願っているのだろうか。
はっきりとは分からない自らの感情に歯痒さを感じ、真琴は唇を噛む。
だが僅かにでも分かる感情があった。

それを、ぽつりと口にした。



「ーーもう少し、もう少し答えが出るまで時間が欲しいけど…、まだみんなと一緒に居たい」
「……、それ、生きたいって言ってるようなモンだぞ」


クレスは思わず笑みを零した。
それに釣られて真琴も笑みを零す。



「それを、リノに言ってやれよ。きっとあいつの事だから気になって言えなかったんだと思うし」
「うん、わかった」


そして再び、リードルフの外れを目指し二人は走り出した。

[ 55/195 ]

[*prev] [next#]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -