3


リードルフの一番外れ。最も森に近い場所で立ち止まると、背を向けたまま顔だけ後ろを向き、問いかけるようにアレルは叫ぶ。


「ーー良い加減出て来たらどう?」


その声に反応し、ぞろぞろと物陰から姿を見せたのは武装をした男の集団だった。恰幅の良い1人が一歩前に出ると、アレルは身体をその集団へ向けた。


「僕が城から出てきた時からずっと着けてたみたいだけど…何か用?」
「てめぇの所為で俺らの仲間が騎士団に捕まったからなァ…、その腹癒せだよ」


ニヤニヤと卑らしい笑みを浮かべながらナイフを掌の上で回す者や、骨を鳴らす者も居た。
きっとおそらく、真琴が服を買った店に入った盗賊の残党なのだとアレルは解釈していた。


「…..、下がってて」


リノに小声で囁くと、大人しく後ろに下がった。リノが後ろに下がったのを確認すると、サーベルに手をかけて引き抜く。引き抜いたと同時に男達はアレルに向かって駆け出す。

1人目の男の腹にサーベルの峰を叩き込み、倒れかかるそれを避け、次の男には蹴りを入れ、次は項を叩く。次々と襲いくる武装した男達を軽々と返り討ちにしていった。


「あいつ、魔法使いませんね…」
「相手が魔法使いか、よっぽどの時以外では魔法の使用は禁止されてるとは言え、俺たちには必要ないってか…、つくづくムカつく奴だなァ……、ーーーおい、"あれ"を使え」


恰幅の良い男が舌打ちをした後に低い声でそう呟く。その声を聞いた男達は、腕に隠し着けていたブレスリングに手を掛けた。僅かにリングが光を発すると一瞬だけ強く風が吹く。



「ーーーーっ!?」



"何か"が変わったと気付いた瞬間に、風の塊がアレルに向かって体力に放たれる。咄嗟に自分の前に魔法で防御結界を貼り、その攻撃を防ぐ。
開いた手の先に浮かんだ魔法陣は全て塞ぎ切るとゆっくりと消えた。



「それは…、オーブ…!?」



後ろから鉄パイプを振り掛ってきた男を薙ぎ払い、容赦無く襲い掛かる男達と剣を交えた。隙を狙うように放たれる風の塊に、苦戦を強いられていた。


(何でオーブが…?あれは、限られた場所以外では使用出来ないようになってる筈…)



「アレル…後ろ!」


リノが叫ぶ。叫んだ声により我に返るが、時既に遅く、咄嗟に防御結界を貼るも僅かに間に合わず身体に強く、風の塊が打ち付けられた。

「……っ、ぁ…っ!」


息が思わず詰まる。
片膝を付いて、何度か咳をすると、男達を睨んだ。



「漸く、てめえが膝を付いたなァ…」



そう言って、満足そうに下卑た笑みを浮かべた。



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