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「ラル…!!」

深々と突き刺さった光の刃は瞬時に消える。
傷口が特にある訳ではなく、血が出ているわけでも無い。ラルはそのまま意識を失い、倒れた。

ミルは倒れたラルに駆け寄る。
次いで真琴達も側へと駆け寄った。アレルとクレスは駆け寄るも、腰に刺したサーベルに手を掛けつつあった。

間も無くして、やたらテンションの高い声が聞こえた。



「はじめまして、だよねぇ。"アリス"の候補生の皆さん♪」


ふわり、と空から舞い降りてくる。
黒いケープは風に煽られて風船の様に膨らみ、着地の僅かな振動で髪が揺れる。
フードの隙間から見えたのは血の様な真っ赤な瞳。


「…あなた…!」
「ん?あぁ、君か。久しぶりだねぇ、真琴」


真琴は記憶を辿る。
自分の目の前に立った少年は、あの時と全く変わっていない。
真琴がこの世界にくるきっかけを与えた少年ーーー。



「"選者"…..!」
「せーかい!忘れられちゃったかと思ったよ〜っ」


おちゃらけたように笑う。思い切り笑ったと思えばぴたりと笑うのを止めて、さっきまでとは違った、何処か薄気味悪い笑みを浮かべた。


「君達がいつまで経っても"アリス"を決めないから、僕が一人目を潰してあげたよ?本当ならそこの女の子を狙う予定だったんだけどねぇ、庇っちゃうんだもん」

視線を一瞬だけミルへと向けた。相変わらずラルの意識は無いままである。少年はゆっくりとミルの方へと歩を進めようと足を動かした。まだ一歩も動いていないのだが、喉元にサーベルの刃が後ろから突き付けられるのが分かる。


「動かない方が身の為だよ。君が何者なのか知らないけど、僕は無駄な争いはしたくない」

少年は目を丸くすると、ニヤリと口許に弧を描く。身体を回転させ、アレルと向き合う様に立つとネクタイを掴み、顔を寄せる。
本人にしか聞こえないような声で少年は囁いた。


「君は、自分の"内側"に隠した秘密を守り抜かなければ、"アリス"になんて絶対になれない。"選者"の僕が言うんだ。信じた方が良いと思うよ…?」
「……っ!?」


一瞬にしてアレルの前から少年は姿を消した。そして直ぐに天井に吊るされたシャンデリアの上に姿を現し、そこに座った。

「本当なら真琴が真っ先にこうなるはずだったのになぁー…そうじゃ無かったら君を選ぶ筈がない。君が"アリス"を巡る物語の始まりになってくれる筈だったのになぁ」
「何を言って…」
「君の願い。 僕は直ぐに叶うって言ったよ。君が、その命を捧げれば良かったんだ。"アリス"の候補生が"アリス"になる為に…」



少年の言葉が深く突き刺さる。気付けば"死"を願わなくなっていたような気がする。
色んな人と出会い、色んな人と話した。たくさんの感情を得る。
気付けば最初の願いなんて忘れてしまう程に楽しかったのだ。

黙り込んでしまう真琴を見るなりわ少年はため息を吐き出す。

「まぁ良いや…、一人目が潰れれば始まってしまう。その子は確実に死ぬよ、双子で候補生なんて珍しい事だねぇ…」


またもフードの隙間から赤い目が姿を見せる。





「君たち候補生は、"アリス"になるために、候補生を殺すしかないんだよ。"生きる"か"死ぬ"か。君たちの運命どちらか一つだ」




その一言を呟き、少年は姿を消した。

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